イネの環境感応雄性不稔遺伝子のマッピング

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要約

水稲農林PL12の温度感応雄性不稔遺伝子tms-2をRFLPマーカーを用いて染色体7にマッピングした。一方、日長感応雄性不稔性を持つX88は長日で完全不稔を示し、それを支配する遺伝子は染色体 5、3にマッピングされた。

  • 担当:農業研究センター・作物開発部・稲育種研究室
  • 連絡先:0298-38-8950
  • 部会名:作物生産
  • 専門:育種
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

気温や日長などの環境条件で雄性不稔化する環境感応遺伝子雄性不稔(EGMS)系統を利用すれば、ハイブリッド育種は飛躍的に効率化される。RFLPマーカー等の分子マーカーを用いて、農林PL12の温度感応雄性不稔性(TGMS)を支配する遺伝子tms-2およびX88の日長感応雄性不稔性(PGMS)を示す遺伝子をマッピングする。

成果の内容・特徴

  • 農林PL12は昼温31°C以上の条件で完全にTGMSを示し、農林PL12/DularとのF1は高い稔実率を示した(表1)。
  • 農林PL12/DularのF2集団とF3系統を用いて、RFLPマーカー遺伝子型とTGMS遺伝子型との連鎖分析を行い、tms-2を染色体7にマッピングした(図1)。
  • X88は13時間45分以上の長日で完全不稔を示し、X88/DularとのF1は高い稔実率を示した(表1)。
  • X88/DularのF2集団においては稔実個体と不稔個体とが3:1の割合の2頂分布ではなく、連続分布を示した(図2)。
  • F2 集団のうち20%以下の稔実を示した個体をPGMS遺伝子に関してX88型ホモとし、サザン解析により、第5、3染色体上に座乗するC246とC1051がPGMS遺伝子と連鎖していると判断された。
  • X88/DularのF2集団において、PGMSが発現する条件下で生育した個体(n=153)の稔実率を量的形質として、個体別のマーカー遺伝子型とのQTL解析を行い、X88が持つPGMS遺伝子の第5,3染色体上の座乗位置を推定した、寄与率はそれぞれ61.3%と21.8%であった(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 今後さらに詳細な遺伝子座を同定するためにRFLPマーカー数を増やし、また、バックグランドを揃えて解析を進める必要がある。
  • PGMSとTGMSとは異なる遺伝子に支配される可能性が強く、利用性が高いと見られる。

具体的データ

表1:供試材料の稔実率 (1995)図1:農林PL12/DularのF2(n=249)におけるtms-2の推定位置

図2:X88/DularのF2(n=190)における稔実率の頻度分布(1996)

図3:X88/DularのF2(n=190)におけるPGMS遺伝子のマッピング

その他

  • 予算区分:イネゲノム
  • 研究期間:平成9年度(平成6年~平成9年)