短期交換耕作を想定した牧草・野菜跡地における作物結合の解析

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要約

牧草跡は野菜跡に比べて残存無機態窒素は少ないが、カンショ、スイートコーンなどは初期生育が優り増収する。ダイズの生育は莢肥大初期までは牧草跡が上回るが、収量は野菜連作跡が高い。陸稲は野菜跡で初期生育が優り収量も高い。両作付前歴が後作に及ぼす影響は3年目には認められなくなる。

  • 担当:農業研究センター・耕地利用部・作付体系研究室
  • 連絡先:0298-38-8532
  • 専門:栽培
  • 部会名:作物生産
  • 対象:いも類・豆類等
  • 分類:研究

背景・ねらい

畑作物は輪作を行うのが望ましいが、種々の事情により輪作の実施が困難な場合が多い。そのため、多くの集約作物の生産地においては、各種の土壌病害虫の多発や過剰な土壌養分の蓄積などが深刻な問題になりつつある。そこで、異なる作目畑間の交換利用、具体的には、畑作物畑と牧草畑との短期交換耕作によって畑作物の持続的な安定生産を図ることを想定し、牧草跡地の土壌窒素の状況、後作物の生育・収量、前歴が後作に及ぼす影響の持続期間などを明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 牧草はアカクローバ、シロクローバ、オーチャードグラスの3種混播で、1~3年間栽培した。野菜はキャベツ(3-5月)-キャベツ(5-8月)-ダイコン(9-11月)のアブラナ科野菜連作の1年3作体系で、3年間栽培した。
  • 牧草跡地土壌の残存無機態窒素は野菜跡地の1/3~1/6程度であるが、培養による無機化窒素量は牧草跡地が上回る。また、牧草跡地では牧草根系由来の窒素が6~7kg/10a程度存在し、VA菌根菌の胞子密度もが野菜跡地より高い(表1、表2)。
  • 両跡地における作物の初期生育は次の3タイプに分かれる。イ.牧草跡地で優る作物(カンショ、ダイズ、アズキ、スイートコーン、エンサイ)、ロ.野菜跡地で優る作物(陸稲)、ハ.両跡地間で差がない作物(キャベツ、ダイコン)(表3)。これらの初期生育の反応には、VA菌根菌の関与が示唆(イは同菌の共生作物、ロは共生作物であるが土壌無機態窒素に対する反応が大の作物、ハは非共生作物)される。
  • ダイズは、牧草跡地では野菜連作跡地に比べて生育初期の根の伸長は旺盛で、根粒の着生時期が早く着生量も多くなり、生育は莢肥大初期まで上回る。
  • カンショ、スイートコーン、エンサイの収量は、牧草跡地が野菜連作跡地より優るが、陸稲、ダイズ、キャベツの収量は野菜跡地が優る。アズキ、ダイコンの収量は両跡地間で差がない(表3)。莢肥大初期まで生育が劣った野菜連作跡地のダイズが、牧草跡地のダイズより多収となった要因は、莢肥大期以降、野菜連作跡地土壌の深さ30~45cm層に多く残存した無機態窒素を有効に吸収・利用したためと推定される。
  • 両跡地の2作目では、牧草跡地は野菜連作跡地に比べてカンショがやや増収する傾向がみられる。3作目になると両作付前歴の影響は認められない(表4)。

成果の活用面・留意点

長期間の牧草、野菜栽培跡地においては別途検討する必要がある。

具体的データ

表1:牧草跡地、野菜跡地土壌の特性

表2:牧草跡地、野菜跡地のVA菌根菌胞子密度

表3:牧草跡地、野菜跡地における後作物の初期生育、収量

表4:牧草跡地、野菜跡地における後作物の収量の推移

その他

  • 研究課題名:作目転換利用効果の解析
  • 予算区分:経常・総合的開発(高収益畑作)
  • 研究期間:平成9年度(平成4年~9年)