水稲用アミド系除草剤の土壌溶液中濃度と雑草感受性値を用いた残効期間の推定

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要約

水稲用アミド系除草剤,プレチラクロール,テニルクロールおよびメフェナセットの残効性は,1)田面水および土壌表層(0-1cm)における土壌溶液中薬剤消長と,2)イヌホタルイ,タイヌビエの感受性値から予測できる。

  • 担当:農業研究センター・耕地利用部・畑雑草研究室
  • 連絡先:0298-38-8426
  • 部会名:作物生産
  • 専門:雑草
  • 対象:雑草類
  • 分類:研究

背景・ねらい

土壌処理型除草剤の効果は土壌条件によって変動することが知られている。しかし,確実な効果を期待するために,全国ほぼ一律に慣行量が設定されている。そこで,圃場ごとの最適薬剤選定による薬剤投下薬量低減化を目指し,水稲用アミド系除草剤の土壌中消長および雑草の薬剤感受性との関係から残効期間を予測可能であることを示す。

成果の内容・特徴

  • 海砂を用いた水耕生育試験(40ml試験管,30°C,12時間日長,水量15ml)で得られた薬量-反応曲線を解析し,出芽時のイヌホタルイおよびタイヌビエのプレチラクロール(PTC),テニルクロール(TNC)およびメフェナセット(MFC)に対する薬剤感受性値(I50)を推定する(表1)。
  • 田面水および表層土壌(0-1cm)の土壌溶液中の薬剤濃度と上記薬剤感受性値から,各薬剤のイヌホタルイおよびタイヌビエに対する残効期間(予測値)を推定する(図1,イヌホタルイの例のみ)。
  • 2で土壌溶液中薬剤濃度から推定した予測値によるイヌホタルイに対する残効期間の薬剤順位は,PTC>MFC>TNCであった。この順位は,圃場で観察した残効期間(観測値)の薬剤順位と一致する(表2)。同様にタイヌビエの場合も,残効期間の予測値による薬剤順位(PTC>MFC>TNC)は,観測値と一致した。
  • 田面水中薬剤濃度から推定しても,残効期間の予測値と観察値は一致した。またそこにおける残効期間の薬剤順位は,両雑草において土壌表層(0-1cm)中薬剤濃度から推定した場合と一致した。

成果の活用面・留意点

  • この方法によって,土壌の種類や圃場条件に関わらず,土壌処理型除草剤の残効期間の比較・定量化が可能となり,圃場レベルにおける最適薬剤を選定するための一指標を策定できる。
  • しかし,予測値は観察値と比較して短い傾向があること,さらに本試験はアミド系除草剤のみの結果であることから,今後,残効期間の推定値の精度を高め,汎用性を高めるために,雑草の薬剤感受性値と田面水または土壌溶液中の薬剤濃度の消長についてさらに詳細な解析をおこなう必要がある。

具体的データ

表1:タイヌビエおよびイヌホタルイのアミド系除草剤感受性値

図1:アミド系除草剤の消長,イヌホタルイに対する残効期間推定方法(土壌溶液0-1cm)

表2:水田における残効期間の実測値と圃場サンプルからの予測値の比較

その他

  • 研究課題名:土壌処理型除草剤の効果発現機構の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成9年度(平成7年~9年)