もち小麦系統(Wx-1, Wx-2 および Wx-4)から単離した胚乳でん粉の組成,構造および特性

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要約

もち小麦系統の胚乳でん粉は,親品種系統と比べ,見かけのアミロース含量および脂質含量が有意に低いが,アミロペクチンの構造は同等であった。示差走査熱量測定による糊化ピーク温度および糊化エンタルピーは,もち小麦でん粉が有意に高いが,アミロペクチン当たりの糊化エンタルピーには差が認められなかった。

  • 担当:農業研究センター・作物生理品質部・流通利用研究室
  • 連絡先:0298-38-8868
  • 部会名:作物生産
  • 専門:食品品質
  • 対象:麦類
  • 分類:研究

背景・ねらい

小麦穀粒の主要成分であるでん粉の特性は,小麦粉の製めん特性に大きな影響を与えている。六倍体パンコムギに存在する 3 種類のワキシー(Wx)蛋白質のうち,Wx-D1 を欠失した品種,Bai Huo,と Wx-A1 および Wx-B1 を二重に欠失した系統,関東107号および西海173号,とを交配して得られたもち小麦系統の胚乳でん粉の特性を解明すれば,もち小麦から調製した小麦粉あるいはでん粉の利用に関する有意義な情報となる。

成果の内容・特徴

  • もち小麦系統,Wx-1,Wx-2(Bai Huo/西海173号)および Wx-4(Bai Huo/関東107号),および親品種系統から単離した胚乳でん粉の組成,構造および糊化特性を解明した。
  • n-ブタノールで繰り返し加熱脱脂した試料のヨウ素結合量は,もち系統で 0.2-0.4 g/100g,親品種系統で 5.2-5.7 g/100 g であり,計算で求めた見かけのアミロース含量は,もち系統で 1.2-2.0 g/100 g,親品種系統で 26.0-28.4 g/100g である(図1)。ゲル浸透クロマトグラムにおいても,もち系統ではアミロースに相当する低分子量のピークが認められない。
  • でん粉の脂質含量は,もち系統で 0.07-0.17 g/100 g,親品種系統で 0.62-0.69 g/ 100 g である。これらの脂質は,脂肪酸組成から,結合脂質と考えられる。
  • 示差走査熱量測定による糊化ピーク温度は,もち系統で 64.4-66.2 °C,親品種系統で 61.3-63.3 °Cであり,糊化エンタルピーは,もち系統で 12.2-12.5 J/g,親品種系統で 9.5-9.6 J/g である。計算で求めたアミロペクチン当たりの糊化エンタルピーは,もち系統で 12.5-12.6 J/g,親品種系統で 13.0-13.4 J/g で有意差が認められない(図2)ので,でん粉の結晶構造にはアミロースの寄与がないとするモデルを支持している。
  • アミロペクチンの側鎖長分布には,もち系統および親品種系統の間に有意な差が認められない。

成果の活用面・留意点

調査したもち系統は,今までアミロースを含まないことが知られていたが,本研究によってアミロペクチンの構造も親品種系統と差が認められないことが確認で きたので,親品種系統とともに用いれば,でん粉糊などの物理化学的特性に及ぼすアミロースーアミロペクチン比の影響を解明するための材料として有用であ る。

具体的データ

図1. もち小麦系統および親品種系統の見かけのアミロース含量

図2. もち小麦系統および親品種系統のでん粉(ΔH)あるいはアミロペクチン(ΔH(AP))当たりの糊化エンタルピー

その他

  • 研究課題名:もち性等の小麦でん粉の化学構造と加工適性の関連の解明
  • 予算区分:新用途畑作物
  • 研究期間:平成 9 年度(平成 8 ~ 10 年度)