収量性に優れた根粒超着生大豆系統「En-b0-1-2」の育成及びその特性

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要約

「En-b0-1-2」は根粒超着生の大豆系統である。多収で生育期間を通じて個体当たり窒素固定能が高いことが特長である。また,生育前半は生長が緩慢だが後半に生長が旺盛になる,開花が長期間に分散して開花中期にも比較的高い結莢率を示すなどの特徴を持つ。

  • 担当:農業研究センター・作物生理品質部・豆類栽培生理研究室
  • 連絡先:0298-38-8392
  • 部会名:作物生産
  • 専門:育種,生理
  • 対象:豆類
  • 分類:研究

背景・ねらい

極めて多くの根粒を着生するスーパーノジュレーション(根粒超着生)の大豆系統が,約10年前から各国で作出されている。これらの系統には,高い窒素固定能力とそれを活かした高い収量性が期待されるが,これまでのところ,普通大豆より収量の優る系統は得られていない。わが国の農業生物資源研が品種「エンレイ」から人為突然変異によって作出した根粒超着生系統「En6500」も,生育量・収量が著しく小さく,しわ・へこみ粒が多い等,実用形質が劣っている。そこで,「En6500」の根粒超着生形質を維持しながら,それ以外の劣った形質を改良した系統の育成を図った。

成果の内容・特徴

  • 「エンレイ」を母,「En6500」を父として人工交配し,F2世代(通常型:根粒超着生型がほぼ3:1に分離する)において根粒超着生型で生育の優れた個体を選抜して系統栽培し,さらに,その中の1系統「En-b0-1」のF5世代で分離した特に生育の優れた1個体を選抜して固定を図ったのが,「En-b0-1-2」である。世代は平成9年においてF10である。
  • 「En-b0-1-2」の個体当たり根粒着生数は「エンレイ」より著しく多く,従来の根粒超着生系統「En6500」と比較しても多い(表1)。収量は「エンレイ」と同程度か優り,他の根粒超着生系統の収量が「エンレイ」より顕著に劣るのと対照的である(表1)。根粒数が極めて多い根粒超着生大豆系統で,収量が原品種より優るものは世界的にも他にはない。「En-b0-1-2」の百粒重は「エンレイ」と同程度か優り,「En6500」に多発するしわ・へこみ粒は認められない。「En-b0-1-2」の熟期は11~20日程度「エンレイ」より遅い。
  • 「En-b0-1-2」は生育期間を通じて,個体当たり窒素固定能(アセチレン還元能)が,「エンレイ」及び他の根粒超着生系統に比べて,最も高い(図1)。
  • 「En-b0-1-2」の生長は,生育前,中期には「エンレイ」に比べ緩慢だが,生育後期には旺盛で,成熟期の地上部乾物重は「エンレイ」に追いつく(図2)。また,莢実の生長(乾物重の増加)も「エンレイ」に比べ緩やかに進行する。
  • 「エンレイ」の開花が開花初期に集中し,以後は開花数・結莢率とも急速に低下するのに比べ,「En-b0-1-2」の開花は長期間に分散し,開花中期にも比較的高い結莢率を示す(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 本系統は地域適応性や耐病性などについては未調査である。
  • 根粒超着生系統を実用品種とするには,既存外国特許の検討・対応が必要である。

具体的データ

表1.収量,根粒数等の特性

図1.個体当たり窒素固定能の推移

図2.部位別乾物重の推移

図3.開花時期別の花数・莢数・結莢率

その他

  • 研究課題名:スーパーノジュレーション系統利用による大豆収量の向上
  • 予算区分:一般別枠研究(新用途畑作),経常
  • 研究期間:平成9年度(平成5~9年)