アレナリアネコブセンチュウ3系統の特性と分布

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

わが国に発生するアレナリアネコブセンチュウは、アイソザイムおよびミトコンドリアDNAの塩基配列の差異によって3系統に分けられ、それぞれの系統は分布域およびかんしょの品種に対する寄生性が互いに異なった。

  • 担当:農業研究センター・病害虫防除部・線虫害研究室
  • 連絡先:0298-38-8839
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物虫害
  • 対象:いも類
  • 分類:研究

背景・ねらい

アレナリアネコブセンチュウは全世界的に分布し、わが国においても多種作物に被害を与えている。本線虫は形態や寄生性および生理的特性等に種内変異があることが指摘されているが、それらを識別するマーカーや相互関係は十分解明されていない。そこで遺伝子やタンパク質を指標として本線虫の類別化を試み、寄生性や分布との関連を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 日本国内各地から探索・収集したアレナリアネコブセンチュウはエステラーゼアイソザイムのパターンからA1型とA2型の2群に分けられた(図1)。さらに、A2型ではミトコンドリアDNAの特定領域(図2)を鋳型とするPCR産物の断片長が1.7kbの個体群と1.1kbの個体群の2群に分けられた。これらを順にMA1系統、A2-J系統、A2-O系統と命名した。A2-J系統は海外では未報告の系統であった。
  • A2-J系統は本州から九州に広く分布するが、A2-O系統は沖縄のみに、MA1系統は九州南部から沖縄に分布が限定された(図3)。
  • かんしょ品種「関東14号」に対する接種試験では、A2-J系統はサツマイモネコブセンチュウと同程度の増殖が認められたが、MA1系統はわずかに増殖したのみで、A2-O系統は全く増殖が認められなかった(表1)。一方、同品種「ベニアズマ」では3系統間に寄生性の差異は認められなかった。
  • アメリカ産アレナリアネコブセンチュウは供試した3個体群すべてがA2-O系統に属し、「関東14号」では増殖しなかった。

成果の活用面・留意点

  • かんしょ品種以外にも3系統間に寄生性の差が存在する可能性があるので、アレナリアネコブセンチュウ抵抗性品種導入等の際には3系統別個に検討する必要がある。
  • A2-J系統は他系統との形態的な差異も認められるため、アレナリアネコブセンチュウに類似する別種の可能性もあり、今後の検討が必要である。

具体的データ

表1:かんしょ2品種におけるネコブセンチュウ各系統の増殖

 

図1:4種ネコブセンチュウのアイソザイム型

 

図2:ミトコンドリアDNAの増幅部位と用いたプライマー (Powers, T.O. & Harris, T.S., 1993)

 

図3:アレナリアネコブセンチュウ3系統の分布

 

その他

  • 研究課題名:ネコブセンチュウ系統間の生理生態的差異の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成9年度(平成9年~11年)