施肥基準見直しのための水稲によるリン酸とカリの収奪量の概算

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

収穫物の籾として水稲に収奪されて水田から外へ持ち出されるリン酸(P2O5)とカリ(K2O)の量はそれぞれ 3.0~3.7 、1.7~2.4 kg/10a 程度となる。この量から判断して水稲の施肥量は、リン酸で 4.0、カリで 2.5 kg/10a が標準的な目安となる。

  • 担当:農業研究センター・土壌肥料部・水田土壌肥料研究室
  • 連絡先:0298-38-8827
  • 部会名:生産環境
  • 専門:土壌
  • 対象:水稲
  • 分類:指導

背景・ねらい

従来から、水田におけるリン酸とカリの施肥量の過剰が指摘されてきた。また最近では、国際情勢の変化から、リン酸とカリの価格が上昇する方向にある。
このような背景のもとに、水稲による水田からのリン酸とカリの収奪量を広範囲に調査して概算し、これら肥料成分の施肥基準を見直すためのガイドラインを示すことを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 自脱型コンバインの収穫では、稲わらは自動的にカッターで細断されて圃場にすき込まれるので、水田土壌から収奪されるリン酸とカリは籾として持ち出される量のみとみなして計算を行った。
  • 籾中のリン濃度は 0.26~0.31 % の範囲にあり、平均では 0.29 % となった。カリウム濃度は 0.28~0.34 % の範囲にあり、平均では 0.32 % となった(表1)。
  • 籾として水田から水稲に収奪される成分量は、リン酸(P2O5)は 3.0~3.7 kg/10aの範囲(平均 3.3 kg/10a)、カリ(K2O)は 1.7~2.4 kg/10a の範囲(平均 1.9 kg/10a)となった(表2、表3)。収奪率はリン酸で 30~50 % 程度、カリで 20~30 % 程度となった(表3)。
  • 以上から判断して、水稲の施肥量は、リン酸で 4.0、カリで 2.5 kg/10a 程度が標準的な目標値と考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 当調査で得られたリン酸とカリの水稲による収奪量は、わが国の水田における平均的な数値であり、今後の施肥基準を見直す場合の参考値として活用される。
  • 稲わらが圃場から持ち出される(焼却も含む)水田では、稲わら中の成分も考慮してリン酸とカリの収奪量の数値を補正する必要がある。

具体的データ

表1:籾のリン,カリウム濃度

表2:籾として水稲に収奪されるリン酸とカリの量

表3:籾として水稲に収奪されるリン酸とカリの量とその収奪率

その他

  • 研究課題名:水田における施用資材等の動態の解明とその制御技術
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成9年度(平成7年~9年)