稲わらの水田と転換畑での分解速度比較

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要約

稲わらの土壌中での分解速度を水田(湛水条件下)と転換畑(非湛水条件下)で比較すると、8月始めまでは両者間にほとんど差がなかったが、それ以後は転換畑での分解が速くなり、水田を上回った。

  • 担当:農業研究センター・土壌肥料部・水田土壌肥料研究室
  • 連絡先:0298-38-8827
  • 部会名:生産環境
  • 専門:土壌
  • 分類:研究

背景・ねらい

有機物資材として圃場に施用される稲わらは、土壌中で土壌微生物の活動によって分解される。その分解過程については、これまでも幾つかの方法で調べられているが、水田(湛水条件下)と転換畑(非湛水条件下)での稲わらの分解を現場で比較したデータは少ない。本研究では、ガラス繊維ろ紙法を使って稲わら炭素の分解速度を測定することによって、水田と転換畑における稲わらの分解の違いを知るための基礎資料を得ることを目的とした。

成果の内容・特徴

  • 室内培養実験(30°C、12週間)では、稲わらの分解速度は畑条件下の方が水田条件下をやや上回る程度であり、特に、分解初期には両条件の間でほとんど差異が見られなかった(図1)。
  • 6月初旬に圃場に埋設した稲わらの分解は、8月始めまでは水田と転換畑でほとんど差異が認められなかったが、その後は転換畑が水田を上回り、晩秋には水田で 64 % 、転換畑で 80 % の分解率を示した(図2)。
  • 一般には、嫌気的な湛水条件下では有機物の分解は遅いと考えられているが、上記の結果より、湛水条件下でも有機物の初期の分解はかなり速く、畑条件下での分解速度と大差ないことが判明した。

成果の活用面・留意点

  • 水田や畑地に施用された稲わらなどの作物残渣の分解過程を明かにし、耕地からのメタンガス発生や炭酸ガス発生の経過を知るための参考資料となる。
  • 有機物の土壌集積については、さらに長期試験で調べる必要がある。

具体的データ

図1:室内培養(30°C)による湛水および非湛水条件下の有機物の分解過程

図2:水田と転換畑における稲わらの分解過程の比較

その他

  • 研究課題名:水田における施用資材等の窒素動態の解明とその制御技術
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成9年度(平成7年~9年)