営農現場における直播水稲の単収水準に影響する要因

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要約

全国208の直播実施経営を対象としたアンケート調査によると,営農現場における直播水稲の単収水準は,用排水条件や圃場条件の違い,直播栽培の経験年数等に規定されている。

  • 担当:農業研究センター・プロジェクト研究第1チーム
  • 連絡先:0298-38-8512
  • 部会名:総合研究,経営
  • 専門:経営
  • 対象:水稲
  • 分類:指導

背景・ねらい

農業労働力の減少や高齢化の進行,価格競争の激化等に伴い,省力・低コスト技術としての水稲直播栽培に注目が集まっている。しかし,直播栽培を導入している経営では,単収水準の低位不安定性が依然として大きな問題になっている。このため,営農現場における直播単収の規定要因を早急に解明する必要がある。

成果の内容・特徴

直播栽培を行っている全国208の経営体を対象にアンケート調査を実施し,直播方式別の単収水準とその規定要因について分析した。

  • 平成8年産の全戸平均の直播水稲単収は482.2kgとなっている(表1)。各直播方式とも,同一品種の移植水稲に比べ,10a当たり50kg前後少ない単収水準にとどまっている。しかし,表中の括弧内に示した標準偏差の値からも明らかなように,直播水稲の単収水準については経営間のばらつきが大きい。
  • 直播と移植との単収差に着目することによって,各直播方式ごとに分析対象経営を低単収グループと高単収グループに区分し(表2),単収差に影響していると思われる要因を整理した(表3)。これによると,1高単収経営では灌漑水が「十分確保できる」と回答した経営が,「乾田直播」,「湛直散播」,「湛直ヘリ」方式で多い傾向がみられる。2「乾田直播」と「乾直早湛」の高単収経営では,暗渠排水施設のある経営が多く,額縁明渠,弾丸暗渠,レーザー均平,地下灌漑等を実施している経営の割合も高い。3高単収経営では,直播圃場の決定に際して「圃場条件を考慮した」とする経営が多い。4高単収経営では低単収経営よりも直播の経験年数が長い。

成果の活用面・留意点

本情報は水稲直播栽培を普及・定着させる際の参考情報となる。なお,直播方式別の分析対象経営は,「乾直早湛(大部分が北海道)」を除き,ほぼ全国的に分 布している(県別にみると「湛直散播」は山形,福井,滋賀県が,「湛直条播」は滋賀県がやや多い。)。また低単収経営群と高単収経営群とでは,サンプルに 特に大きな地域的な偏りはみられない。

具体的データ

表1:直播方式別にみた平成8年産の直播水稲単収

表2:直播方式別・直播単収別にみた経営概況

表3:直播水稲単収に影響を及ぼしている要因

その他

  • 研究課題名:大規模低コスト水田営農活性化技術の確立(大規模水田輪作技術体系の確立)
  • 予算区分:営農合理化(地域総合)
  • 研究期間:平成9年度(平成5~9年)