農村マーケット化の意義と必要条件
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要約
マーケティング戦略からの発想を基本に、農村の場と物と心を組み込んで都市部の人たちに地元で提供する「農村マーケット化」事業は、多面的な地域活性化を促す農村地域産業をつくり出すことができる(意義)ことを事例的に明らかにし、そのための必要条件を提示した。
- 担当:農業研究センター・農業計画部・農業組織研究室
- 連絡先:0298-38-8425
- 部会名:経営
- 専門:経営
- 分類:行政
背景・ねらい
単なる農産物の供給よりも、都市住民に対する心のやすらぎの場を提供する機会を与えることが重要になってきた。そのような背景で地域活性化に寄与するために、農業を中心とする農村地域産業の育成をいかに図るかという観点から、農村の場を使った農産物(加工を含む)の提供に合わせて、都市住民に対する農村の人たちの心(意志・思い・趣にもとづくサービス)を売り込む新しい事業展開の方向性(マーケティング戦略からの農村まるごと産業化)を、いくつかの典型的事例からさぐり、その成立要件を明らかにする。
成果の内容・特徴
主に、表1に示した事業体の事業活動分析から、つぎのことが明らかになった。
- 農村マーケット化を推進・実施している事業体の理念は、都市の生活者のメンタル的なニーズを踏まえて、地域住民の意欲をうまく引き出すように工夫し、地域資源活用を図る地域の再生・再構築におき、成功している。
- そのための事業展開の特徴は、(イ)ひとつの事業体が第1次から第3次までの産業を結びつけた事業の実施、(ロ)都市住民の心のやすらぎを考慮した事業理念にもとづく独自な演出形態の創出と特徴ある活動・産品開発(商品差別化)、(ハ)生産・開発した産品を直売・宅配・レストラン等で直接に提供し、都市部から農村部への人の逆流を促している、(ニ)農場自体をマーケットの場として活用し、生産・加工の場を開放して、都市住民とのコミュニケーションを重視し顧客化に努めている。
- 農村マーケット化の意義は、(イ)多面的な就業の場の創出、(ロ)地域資源をフルに活用した売上げの向上(図1参照)、(ハ)活動と事業をあらゆる階層に浸透・拡大、(ニ)地域資源の発掘と荒廃農地の利用向上、(ホ)健康産業としての農業の新たな位置づけ、(ヘ)消費者に農業への理解を深させることによって、非農家も含んだ農村地域の産業体系を確立しているところにある。この意味で、消費者の立場から発想する農村マーケット化は、生産を中心とするこれまでの農業の枠を大きく拡大した経済活動に展開しつつある。
- 農村マーケット化に必要な条件は、(イ)都市化と共有する基本コンセプトの設計と実施主体の明確化、(ロ)顧客化をねらった園や拠点施設のデザインと演出、(ハ)コミュニケーション重視によるニーズの不断的把握による事業化(表2参照)、(ニ)地域性を前面に出した独自性のある産品開発、(ホ)生産者による消費者の組織化、などにある。
成果の活用面・留意点
事業コンセプトを設計する主体は、従来の枠にとらわれない人材の登用が必須である。また、JA、役場は当該主体を積極的に支援する体制をつくることが重要である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:農村諸機能の活用による農村マーケット化の理念とデザインの研究
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成9年度(平成8~10年)