事業規模に応じた企業型野菜作経営の経営戦略
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要約
雇用労働力を導入して大規模生産を行うとともに、量販店や加工業者と直接取引している企業型野菜作経営の経営戦略の特徴を事業規模の拡大と関連づけて明らかにした。小規模層(2億円未満)では、直営野菜生産だけの部門構成であるが、大規模になるに従って、委託生産部門を取り入れ、さらに加工部門、流通部門へと多角化する。
- 担当:農業研究センター・経営管理部・園芸経営研究室
- 連絡先: 0298-38-8874
- 部会名:経営
- 専門:経営
- 対象:野菜
- 分類:行政
背景・ねらい
野菜作では、雇用労働力を導入して、大規模生産を行うとともに、スーパーや加工業者等と直接取引する企業型経営が展開し始めており、既存の野菜作経営・産地を補完する新たな担い手として注目されている。そこで、このような企業型野菜作経営の展開方向を経営戦略の視点から明らかにする。
成果の内容・特徴
- 企業型経営の製品・市場戦略(主な生産品目・部門と販売市場)は、既存の野菜産地との競合を回避しやすく、または相対的に有利に競争できる加工・外食向け野菜や需要規模の小さな軟弱物等を選択するといった特徴がある(表1)。例えば、企業型露地野菜作経営の展開がみられる加工・外食向け野菜は既存の野菜産地の取り組みが弱く、企業型施設野菜作経営の展開がみられるミツバやオオバは、需要規模が小さいため個別経営でも大規模生産すれば、卸売市場において高い市場シェアを獲得することにより市場競争において有利な位置を占めることができる。
- 企業型経営においても事業規模の大小に応じて、その成長ベクトル戦略(経営の展開方向)は異なる。小規模層(数千万円~2億円未満)では、既存部門の直営生産で事業拡大する方向にあり、直営型の市場浸透戦略と位置づけられる。しかし、中規模層(2億円~5億円未満)では、他の中小規模経営への委託生産や分社化による事業拡大が特徴的であり、市場浸透ではあるが委託型と位置づけられる。さらに大規模層(5億円以上)では、カット野菜製造等の加工に進出したり、直営小売店を計画するなど多角化戦略が取り入れられている(表2)。
- 中規模層や大規模層が、委託生産や分社化を取り入れているのは、生産規模の拡大に伴う機械投資や農地集積のコストを軽減するためとみられる。ただし、そのためには経営内で培ってきた大規模生産技術を委託先経営に移転できるよう技術を標準化しておくことが条件となる。
- 大規模層が加工・流通へと多角化を指向する背景には、カット野菜や外食向け需要の増大という経済的条件がある。すなわち、スーパーや外食産業は、従来から低コスト化のためにパッケージや食材の下ごしらえ工程を外部委託してきたが、品質の向上や労賃コストの一層の低減のために、その拠点を産地に移そうとしている。
成果の活用面・留意点
企業型経営の絶対数が少ないため、本研究成果は事例調査による範囲を出ていない。したがって、この成果を現場の経営指導等に用いる場合は、あくまで参考データとして取り扱っていただきたい。
具体的データ


その他
- 研究課題名:企業型野菜作経営の経営戦略
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成9年度(平成7~9年度)