有機農産物等のブランド的取り扱いと販売価格

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要約

有機農産物等は、スーパー等の小売店舗では、各企業のブランド名のみ表示されて販売される場合が最も多い。これは、栽培方法や生産者名などの具体的な情報を提示せずに、当該企業の販売品としての特徴をだすためである。また、有機農産物等の販売価格は平均すると、慣行農産物より50%程度高い。

  • 担当:農業研究センター・経営管理部・園芸経営研究室
  • 連絡先:0298-38-8417
  • 部会名:経営
  • 対象:野菜
  • 分類:行政

背景・ねらい

これまで、有機農産物等は、産直などによって販売される場合が多かった。しかし、今後は一般の小売店舗での取り扱いにともない、販売ルートの増加と販売条件の多様化が生じると予測される。そこで、有機、無農薬、無化学肥等によって生産される野菜の販売店における取り扱い、価格の現状等を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 農林水産省等の委託、調査によるアンケートから、消費者は「安全」、「健康によい」等を理由として、有機農産物等に「大いに関心」をもっており、「価格の安さ」、「正確な表示」による販売、「近くの店舗での扱い」等を要望していることが分かった。
  • スーパー等は有機農産物について、有機コーナーの設置、ブランド化、ネーミング化を進めている。有機農産物等の取り扱い種類と割合に関して(図1)は、各企業が独自につける企業のブランド名のみ表示される場合が最も多い。ついで「減農薬」、「無農薬」、「有機」の順で、栽培方法に関連づけた表示のもの多くなっている。ブランド名のみの場合は、栽培方法や生産者名の具体的情報を提示しないことで、企業の販売品としての特徴を前面にだすマーケティングをとっている。このように、生産者や栽培責任者などの表示は企業毎でことなっており、統一的な表示はなされていないのが現状である。
  • 小売店舗での販売価格を比較すると(図2)有機農産物等は平均で50%程度、慣行農産物より高くなっている。 また、過去5年間の生産者の出荷価格平均を、無農薬・無化学肥料栽培のものでみると(図3)、慣行農産物に比較して20%~10%高い出荷価格帯のものが最も多く、次いで40%~30%高い場合が多い。
  • 有機農業あるいは環境保全型農業に対しては、消費者の関心は高く、購入理由では安全や環境に関連する項目の比率が高い。現在のところ生産者の出荷価格は40%~10%高い価格帯に多く分布しており、栽培技術の裏付けをもつことによって、ある程度高い出荷価格を実現することが可能である。

成果の活用面・留意点

有機農業について、技術的な特徴を有利な販売価格に結びつけることが可能であることが明らかになった。しかし、取り扱いは流通チャネル毎に多様であ。その ため、栽培技術だけではなく、流通販売の相手への対応などのマーケティングの視点が不可欠である。また、本情報の小売店舗価格のデータについては、店舗数 でデパートの比率が5割近くあるので、この点に留意する必要がある。

具体的データ

図1:小売店舗における有機農産物等の種類

図2:慣行農産物と有機農産物等の販売価格の比較

図3:無農薬・無化学肥料栽培野菜の出荷価格帯

その他

  • 研究課題名:環境保全型高品質野菜の生産流通動向と地域条件の解明
  • 予算区分:地域総合
  • 研究期間:平9年度(平9~10年度)