イネのリコンビナント・インブレッドラインによるRFLP連鎖地図
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
インド型品種「密陽23号」と日本型品種「アキヒカリ」との交雑により,単粒系統(SSD)法を用いて191系統からなるリコンビナント・インブレッドライン(RILs)を育成し,連鎖地図を作成した。本地図は165個の制限酵素断片長多型(RFLP)マーカー を用い,ほぼゲノム染色体全域をカバーしている。
- 担当:北陸農業試験場・地域基盤研究部・稲遺伝解析研究室
- 連絡先:0255-26-8251
- 部会名:作物生産・生物工学
- 専門:バイテク
- 対象:稲類
- 分類:研究
背景・ねらい
制限酵素断片長多型(RFLP)マーカー等の分子マーカーの開発および作物のそれを用いた連鎖地図の作成により
,これまで解析が困難と
されてきた量的形質についても,その遺伝様式や遺伝子座(QTL)に関する解析が可能となってきている。効率
的かつ精度の高い分析を行うためには,反復試
験が可能な解析集団が必要であり,RILsを開発し,さらにRFLPマーカーによる連鎖地図を作成する。
成果の内容・特徴
- 単粒系統(SSD)法によりインド型品種「密陽23号」と日本型品種「アキヒカリ」との交配組合せの191系統
からなるRILsを育成した。
- RILsのF5にを用いて,RFLPマーカーによる連鎖地図を作成した。本地図は,第4,5,10染色体で多型
が認められない一部の染色体領域はあるものの,165個のRFLPマーカーでイネのほぼゲノム染色体全域
(1125.8cM)をカバーしている
(図1)。
- RFLPマーカーを用いた解析から,遺伝子頻度の分離に異常(歪み)を生じる領域が,12本の染色体上
に合計16カ所あることが認められる。また,第11と12染色体の端部で,10~20cMにわたり染色体が重複する領
域が認められる
(図1)。
- 出穂期に関しては,RILs全体として2ヶ月間程度の変異があったが,未出穂個体・系統は少なかった
。
- 量的形質遺伝子座(QTL)解析を行った結果,第2,3(2カ所),6,7,9(2カ所),10,11染色体の合
計9カ所で出穂性に関連するQTLが認められる
(図1)。
成果の活用面・留意点
- 本RILsは育成過程における未出穂個体・系統が少なかったため,両親に由来する広い遺伝変異が保有され
ている可能性があるので,収量性や米品質等の重要農業形質に関する遺伝解析に利用することが出来る。
- 一部解析出来ていない染色体領域があること,分離異常が認められることなどに留意する必要がある
。
- F5においてRFLP分析をおこなったので,一部ヘテロ部分の分離が生じる。
- 農業形質の評価に当たっては,多くの場合出穂性との関連が形質発現の重要な要因となるので,出穂
性のQTL解析の結果を参考にしながら進める。
具体的データ

その他
- 研究課題名:遠縁交雑における有用形質導入に関する効率的選抜技術の開発
- 予算区分:次世代稲作
- 研究期間:平成9年度(平成7~9年)
- 発表論文等:分子マーカーを用いた遺伝・育種学的研究6.イネの出穂期,稈長,穂長に関するQTL解析,
育雑46(別2):60,1996.
QTL analyses of agricultural characters using molecular markers in rice (Oryza sativa L.), 2nd
International Crop Science Congress, Abstract:11, 1997.
Distorted segregation in a wide cross between an indica variety, Milyang23,and a japonica
variety, Akihikari, in rice (Oryza sativa L.), Plant &Animal Genome V:84,1997.
分子マーカーを用いた遺伝・育種学的研究7.イネにおける日印交雑由来のリコンビナントインブレッド
ラインの育成,育雑47(別1):43,1997.