イネのリコンビナント・インブレッドラインを用いた食味のQTL解析
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要約
DNAマーカーと日印交配によるリコンビナント・インブレッドライン(RILs)を用いた食味のQTL(量的形質遺伝子座)解析を行
い,第1,3,6,8,11,12染色体上に食味に関連する形質が重なるQTLを検出した。特に第6染色体上のQTLは,粘り,滑らかさ,光沢,総合評価に共通して関連する。
- 担当:北陸農業試験場・地域基盤研究部・稲遺伝解析研究室・稲育種研究室・品質評価研・上席
- 連絡先:0255-26-8251
- 部会名:作物生産・生物工学
- 専門:バイテク
- 対象:稲類
- 分類:研究
背景・ねらい
食味は複合形質であり,遺伝的な解析が困難と考えられてきた。近年,DNAマーカーの開発により複雑な遺伝様
式を示すこのような量的形
質について,その関連する遺伝子の染色体上の位置や作用を明らかにできるQTL(量的形質遺伝子座)解析が行
えるようになってきた。インド型イネ品種「密
陽23号」と日本型品種「アキヒカリ」との交配により得られたリコンビナントインブレッドライン(RILs)につ
いて,DNA(制限酵素断片長多
型:RFLP)マーカーを用いたQTL解析を行い,食味の遺伝的発現機構を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 1995年および1996年にRILs,191系統を用いて,食味関連形質(米飯の光沢,粘り,滑らかさ,型崩れ,堅
さ,総合評価「個人の嗜好の
良し悪し」,アミロース含量,タンパク質含量)についてのQTL解析を行い,合計14の染色体領域でQTLを検
出した。このうち第
1,3,6,8,11,12染色体上のQTLは,複数種の形質が重なって検出される
(図1)。
- 両親はともにやや悪いとの総合評価であるが,特に第6染色体上のQTLは,総合評価,光沢,粘り,
滑らかさの評価が,「密陽23号」の遺伝子型をもつとき「良い」あるいは増大すると評価される
(図2)。
- このQTLはアミロースおよびタンパク質含量との関連は認められず,これら形質以外の食味に関係す
る遺伝子座である。
成果の活用面・留意点
- 検出したQTLの作用および穀粒成分等との関係を解明していく必要がある。
- 検出したQTLは「密陽23号」と「アキヒカリ」との組合せに限定されたものであり,「コシヒカリ」
,「ササニシキ」に代表される食味との関連性については今後の検討を要する。
具体的データ


その他
- 研究課題名:イネの食味に関するQTL(量的形質遺伝子座)解析
- 予算区分:経常,科振調
- 研究期間:平成8~9年
- 発表論文等:1.QTL analysis of taste using molecular markers in rice (Oryza sativa L.). The 8th
SABRAO General Congress and Anual meeting of Korean Breeding Society. Abstracts 1997.
2.イネの食味に関するQTL解析,育雑47(別2),1997。