直播水稲個体群の異なる苗立密度における収量調節機能とその品種比較

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要約

直播栽培の苗立密度に対する水稲個体群の収量の調節様式は,品種の草型により異なる.低密度領域における穂数の調節の違いは,低節位の分げつの発生の差に由来する。一穂籾数は穂数に応じて補助的に調節される。

  • 担当:北陸農業試験場・水田利用部・栽培生理研究室
  • 連絡先:0255-26-3241
  • 部会名:作物生産
  • 専門:栽培
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

水稲の直播栽培では,苗立密度の変動にかかわらず安定した収量を確保することが重要である。そこで,異な る苗立ち密度に対する収量の調 節,とりわけ収量との関係の強い総籾数の調節がどのように行われるかを草型の異なる3品種で比較し,直播栽 培の収量安定化のための品種開発・選定,栽培管 理の基礎資料とする。

成果の内容・特徴

  • 収量・乾物重は,草型によらず,広い範囲の苗立密度に対してほぼ一定に調節される。 収量構成要素の 中では単位面積当たり総籾数が収量と高い相関を示し,その変動が収量を規定する (図1)。
  • 苗立密度に対する個体当たり穂数の調節は,高密度領域に比べて,低密度領域で品種による違いが大 きい (図2)。 低密度領域では2,3節の低節位の分げつの発生に違いが大きく,穂数型品種「初星」では低節位分げつ由来の 穂数や籾数の割合が高い (図3)。
  • 苗立密度に対する一穂籾数の調節は,むしろ単位面積当たり穂数に大きく影響され,穂数調節を補う 。一穂籾数は,一次枝梗よりも二次枝梗に関する形質との相関が高い。
  • 以上,潤土直播栽培においては,苗立密度に対して特に低密度領域で低節位での分げつの発生により ,品種による穂数調節の違いが大きくなる。一穂籾数は穂数に応じて補助的に調節される。

成果の活用面・留意点

  • 本試験は,初期落水の潤土直播栽培の体系により行われた試験である。

具体的データ

図1 苗立密度、総籾数と収量との関係

図2 苗立密度と個体当たり穂数との関係

図3 節位別分げつ数の推移

その他

  • 研究課題名:異なる個体群環境下における水稲の自己調節機能の解明
  • 予算区分 :総合的開発(次世代稲作)
  • 研究期間 :平成9年度(平成7年~9年)
  • 発表論文等:異なる苗立ち密度に対する直播水稲個体群の収量調節機構,日作紀第66巻別号2,15~16, 1997。