我が国における最近のオオムギ雲形病菌のレース

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要約

1989年~96年に国内各地から採取した雲形病菌に、病原性の分化(レース)が認められた。供試した 126菌株は5つのレースに類別され、新たに確認されたレースJ-4a(仮称)が約70%を占める。

  • 担当:北陸農業試験場・水田利用部・病害研究室
  • 連絡先:0255-26-3242
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物病害
  • 対象:麦類
  • 分類:研究

背景・ねらい

オオムギ雲形病(Rhynchosporium secalis)は、北陸や東北地域中心に恒常的に多発生し、収を量と品質低下の大きな要因となっており、低コス ト安定生産を推進する上から抵抗性品種の 育成が進められている。一方、本病菌には病原性の分化(レース)が知られているが、我が国では梶原・岩田 (1963)が J-1~J-10の10レースを報告しているのみである。近年の国内レース分布実態は不明であることから、梶原・岩 田(1963)の判別品種に主要栽培品 種である「ミノリムギ」と「カシマムギ」を加えた12品種を供試し、国内におけるレースの分布を明らかにし 、抵抗性品種利用のための基礎的知見を得る。

成果の内容・特徴

  • 1989~1996年に北陸地域を中心に全国各地から雲形病罹病葉を採取し、分離した126 菌株のレース検定を 行った結果、5つのレースが確認された (表1)。
  • レースの構成割合は、レースJ-4が約16%、J-5が約6%であり、レースJ-4よりも病原性の幅が狭い レースJ-4a(仮称)に相当する菌株が約70%を占める (表1)。
  • 東北農試(岩手県盛岡市)育種圃場から採取した菌株の中にのみ、病原性の幅の広いレースJ-7とJ-9 が認められた (表1、 2)。
  • レースと採取年次や地域間に明瞭な関係は認められない (表2)。

成果の活用面・留意点

  • 品種育成および選定のための基礎的資料となる。
  • 雲形病抵抗性品種・系統の利用にあたっては、雲形病菌レースの変化と、それによる抵抗性の崩壊に 留意しなければならないことから、定期的なレース分布調査が必要である。

具体的データ

表1 1989年~1996年に分離されたオオムギ雲形病菌レースの反応型と菌株数

表2 オオムギ雲形病菌レースの分布状況

その他

  • 研究課題名:オオムギ雲形病の伝染過程の解明
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成9年度(平成3~9年)
  • 発表論文等:国内におけるオオムギ雲形病菌のレース分布(講要),日植病報,63巻3号,1997年。