施肥窒素の玄米生産効率に基づく水田生産力の新指標

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要約

水稲の窒素施用量試験の無窒素区及び三要素区の玄米収量、三要素区の窒素施肥量から500kg/10aの収量を得るのに必要な窒素施肥量(Nf)を求める式を策定し、この Nfを肥培管理のための新たな水田生産力指標とする。

  • 担当:北陸農業試験場・水田利用部・土壌管理研究室
  • 連絡先:0255-26-3244
  • 部会名:生産環境
  • 専門:肥料
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

水田生産力の指標として土壌からの窒素発現量がしばしば利用される。これは、窒素無施用条件での水稲収量 にはよく対応するが、施肥窒素 の損失等についての情報が欠けているので施肥条件下での水田生産力の目安としては不十分である。そこで、 施肥条件下での水田生産力指標について検討した。

成果の内容・特徴

  • 玄米収量500kg/10aの水準では、収量は窒素施肥量にほぼ線形に応答する。そこで、 (図1) の 関係から無窒素区玄米収量:Y0(kg/10a)、三要素区玄米収量:Y(kg/10a)、三要素区窒素施肥量:Nap(kgN /10a)の1組のデータ から、500kg/10aの収量を得るのに必要な施肥窒素量(Nf)を比例計算し、このNfを肥培管理のための新 たな水田生産力指標とする(式1)。この 指標値が大きい水田では生産力が低く、同じ収量を得るために多量の窒素肥料を必要とする。 Nf=Nap×(500-Y0)/(Y-Y0) ・・・・ 式1
  • Nfは地力窒素指標(N0)が大きいほど小さい傾向があり窒素肥沃度を反映しているが (図2) 、土壌による施肥窒素の損失率の違い、品種・気候等による吸収窒素の玄米生産効率の違いも反映された包括 的な水田生産力指標である。
  • この指標を用いると、例えば全国の土壌保全基準点調査圃の施肥試験データから単作水田と二毛作水 田、あるいは三要素区と稲わら区の生産力の比較が可能である (表)。

成果の活用面・留意点

  • 本指標は、同一水準の収量を得るのに必要な施肥窒素量の違いが、土壌、品種、作期、気候等の影響を含 めて示されるので、例えば窒素肥料低投入型の稲作を検討する際の有効な指標となる。
  • 本指標では基準収量を500kgN/10aとしたが、収量と窒素施肥量の比例関係が保たれる範囲で収量水 準を任意に設定できる。また、無窒素区が無い場合でも施肥量の異なる試験区間の施肥量差と収量データがあ れば、同様な指標の計算が可能である。

具体的データ

図1 水田生産力指標算出の考え方

図2 No(無窒素区のN吸収量推定値)とNfとの関係

表 日本全国の土壌保全基準点調査圃場等における水田生産力指標

その他

  • 研究課題名:水田における肥料・有機物投入に伴う土壌肥沃度変動の土地利用形態別マクロモデル
  • 予算区分 :貿易と環境
  • 研究期間 :平成9年度(平成8年~12年度)
  • 発表論文等:日本土壌肥料学会講演要旨集、44集(1998)