乾燥・還元過程における土壌の微細構造変化に及ぼす遊離酸化鉄の影響

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要約

汎用水田の微細構造は土壌中の遊離酸化鉄の影響を強く受ける。粘土中に酸化鉄を添加して土壌のモデル物質を作ると、乾燥によって安定した構造ができるが、この構造は遊離酸化鉄の還元によって不安定化する。

  • 担当:北陸農業試験場・水田利用部・土壌管理研究室
  • 連絡先:0255-26-3244
  • 部会名:生産環境
  • 専門:土壌
  • 対象:
  • 分類:研究

背景・ねらい

畑地化・水田化に伴う土壌中の遊離酸化鉄の形態変化は、土壌の微細構造に関与している可能性がある。そこ で重粘土に一般的に含まれる粘土鉱物(スメクタイト)に鉄を添加し、乾燥および還元処理による土壌の微細 構造変化に及ぼす遊離酸化鉄の影響をモデル的に検討した。

成果の内容・特徴

  • 【乾燥(畑地化)過程】スメクタイトおよびスメクタイトー酸化鉄複合体の両者とも---1.5MPa以下の乾燥 によって微細構造が形成し、水中沈定容積(SV)を減少するが、乾燥によるSVの減少程度は酸化鉄を添加した 区の方が大きい (図1)。
  • 【乾燥過程での微細構造の変化】既報の粘土の一般的な微細構造は 図2 のようである。乾燥過程で酸化鉄を添加した試料では粘土のみの試料に較べて、半径50-100nmの孔隙が増加し (図3) 、この孔隙の半径は粘土ドメイン間の孔隙半径の推定値と一致する。すなわち、酸化鉄の存在によって、一度 形成された粘土ドメイン構造は乾燥によって生じる水の強い毛管力のもとでも安定に保たれる。
  • 【還元(水田化)過程】乾燥した粘土試料をアスコルビン酸で還元すると、酸化鉄を含んだ試料での み、構造が不安定化しSVが増加する (図4)。
  • 以上、乾燥(畑地化)過程において遊離酸化鉄は粘土のドメイン構造の安定化に作用し、還元(水田 化)過程ではこの構造の不安定化に作用 する。この結果は、畑地化の指標として用いられる汎用化水田土壌の微細構造は、乾燥および遊離酸化鉄の酸 化還元反応の影響を強く受けていることを示す。

成果の活用面・留意点

  • 汎用化水田の土壌構造の変化を解明し、制御する為の基礎的な知見となる。

具体的データ

図1 乾燥過程での水中沈定容積の変化

図2 土壌の微細構造の模式図

図3 乾燥過程における試料の孔隙量の分布

図4 風乾したスメクタイトー鉄複合体へのアスコルビン酸還元処理による水中沈定容積の増加

その他

  • 研究課題名:土壌中の鉄成分の存在形態が重粘土汎用水田の力学特性におよぼす影響の解明
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成9年度(平成8~10年)
  • 発表論文等:日本土壌肥料学会、1997:低湿重粘土水田の畑地化過程における物理性変化の要因解明-乾 燥履歴と遊離酸化鉄の相互作用-