玄米中カドミウムの1M塩酸抽出・ICP分析法による迅速定量法

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要約

小型粉砕器で玄米粉末を調整した後、1M塩酸振とう抽出を行い、上澄液をICP(誘導結合プラズマ発光分析法)で測定すれば、玄米中カドミウムを迅速に定量できる。

  • 担当:北陸農業試験場・水田利用部・土壌管理研究室,宮城県農業センター・土壌肥料部・公害科
  • 連絡先:0255-26-3244,022-383-8124
  • 部会名:生産環境
  • 専門:肥料
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

土壌汚染対策の中でもカドミウムは重要な問題で、多数試料の玄米中カドミウムのプロセス定量分析が行わ れている。その分析方法として は、酸加熱分解・有機溶媒抽出、原子吸光法が主であるが分液操作を必要とする等、作業能率が悪く、各種無 機酸や有機化合物を使用するので酸性ガスや有機溶 媒などの揮散による分析技能者の被爆も懸念される。また分析操作により出てくる実験廃ガスや廃液の処理に も問題を生じている。そこで、玄米粉末を1M塩酸 で抽出しICPにより迅速に定量分析する方法(本法)を確立した。

成果の内容・特徴

  • 分析操作:玄米(水分15%以下)20~30gを小型粉砕器(コーヒーミル等)で粉末 (90%以上が約0.5mm篩通過)とする。試料1gに1M塩酸20gを分注器で添加、室温にて約1時間振とう抽出し 、1昼夜放置後上澄み液をICPに導入しカドミウムを測定する (図1)。
  • 分析結果:標準の極低濃度玄米試料として供試した環境庁国立環境研究所作製のNIES No.10(Cd 23 ng/g乾物)においても本抽出法で発光ピークが認められ (表1) 、標準試料の保証値と本法の定量分析値は低濃度から高濃度までよく一致する (表2) 。また、酸加熱分解・タングステン炉原子吸光法との回帰直線は原点を通り相関係数は0.99である (図2) 。分析精度は、変動係数4~6%であり、同じ水田圃場から採取された玄米の定量分析値は、定量分析操作日 が違っても良く一致し、また採取圃の違いによる濃度差異が認められる。
  • 以上、標準試料との対比から、1M塩酸抽出によって玄米に含まれるカドミウムがほぼ抽出され、I CPで定量可能である。

成果の活用面・留意点

  • 本法は従来法に比較し迅速な定量法であり多数試料のプロセス定量分析に活用できる。
  • 玄米中カドミウムはフレ-ムレス原子吸光法でも定量可能であるが、本法は定量分析操作が容易で分 析能率が向上する。
  • ICP機種によっては感度不足の機種があるので留意する必要がある。

具体的データ

図1 定量分析操作

表1 玄米中カドミウムのICPにおける発光強度

表2 本法のCd定量値と標準試料保証値との比較

図2 IM塩酸抽出法と酸加熱分解法の比較

その他

  • 研究課題名:大区画水田における化学管理計測に基づく施肥技術の確立
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成9年度(平成9~14年)
  • 発表論文等:日本土壌肥料学雑誌に投稿中。