イネの遺伝子および分子マーカーを染色体上で検出できるFISH法

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要約

FISH法を用いて分子マーカーおよび遺伝子を染色体上へマッピングすることによって、染色体の物理地図作成が容易になる。

  • 担当:北陸農業試験場・地域基盤研究部・稲育種工学研究室
  • 連絡先:0255-26-3238
  • 部会名:生物工学
  • 専門:バイテク
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

蛍光in situハイブリッド(FISH)法は染色体上の遺伝子の位置を可視化し、染色体物 理地図を作成する上で有効な手段である。近年イネ高密度連鎖地図の構築が進み、遺伝子と連鎖している分子 マーカーが多く得られるに従い、それらの分子マー カーについても実際の染色体上の位置を明らかにすることが重要な課題となっている。そこでイネ科の植物の 中でも最も小型の染色体を有するイネにおいて病害 虫抵抗性等の遺伝子および分子マーカーを染色体上で高感度に検出できるFISH法を開発し、染色体上にマッピ ングする。

成果の内容・特徴

  • YAC(399kb)、BAC(150kb)、Cosmid(35kb)、RFLP(1.29kb)の各DNAクローンを再現性よくイネ染 色体上に位置づけるFISH法の開発によりイネの遺伝子および分子マーカーを可視化できる。
  • イネにおいて複数の遺伝子を染色体上に同時に位置づけるマルチカラーFISH法をイネにおいて開発た ことにより、染色体上の遺伝子間の位置関係を明らかにできる (図1)。
  • 高い空間分解能が得られる伸長DNA鎖上でのFISH法の開発により、DNA配列長が測定できる (表1)。
  • イネの遺伝子、例えばいもち病抵抗性遺伝子、白葉枯病抵抗性遺伝子をイネ染色体物理地図へマッピ ングすることにより、染色体の物理地図作成が可能となる。

成果の活用面・留意点

  • これらの技術は、クロモソームウオーキングやコンティグマップ作成において有効な情報を得る手法とし て威力を発揮する。
  • 遺伝子・DNAの染色体上の位置を可視化するFISH法は、広範囲な作物に応用する事が 可能となる。

具体的データ

図1 イネ染色体上へのいもち病抵抗性遺伝子を含むと報告されているBACクローンのマッピング

表1 イネ品種間における5Sリボソーム遺伝子およびテロメア配列の長さとコピー数

その他

  • 研究課題名:in situハイブリッド法を用いたイネの染色体地図の作成技術の開発
  • 予算区分 :イネ・ゲノム
  • 研究期間 :平成9年度(平成6~9年)
  • 発表論文等:Ohmido N.and Fukui K.(1997) Visual verification of close disposition between a rice A genome-specific DNA sequences (TrsA) and the Telo-mere sequence. Plant Mol. Biol. 35:963-968.
    Fukui K., Shishido R. and Kinoshita T.(1997)Identification of the
    rice D genome chromosomes by genomic in situ hybridization. Theor.
    Appl. Genet. 95:1239-1245.