野菜畑への豚ぷん施用に伴う銅・亜鉛の土壌蓄積と施用量の削減
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要約
昭和49年から2年に1回程度、10a当たり2トンの豚ぷん施用を行ってきた野菜畑では、銅・亜鉛が蓄積していた。豚ぷん施用はレタスーニンジンの作付時を中心に行われており、窒素収支から見れば、豚ぷん施用量を削減することができる。
- 担当:農業研究センター・プロジェクト研究第2チーム
- 連絡先:0298-38-8840
- 部会名:総合研究,生産環境
- 専門:土壌
- 対象:葉茎菜類,根菜類
- 分類:研究
背景・ねらい
豚の成長促進の目的で飼料に添加された銅・亜鉛化合物のため、豚ぷん中の銅・亜鉛含有率は他の家畜ふんに比べて非常に高いことが知られている。したがって、豚ぷんを農耕地へ連用した場合の銅・亜鉛の土壌蓄積および作物に対する過剰障害には特に注意を払う必要がある。そこで、主としてレタスーニンジンの作付体系において乾燥豚ぷんを施用している野菜畑について、銅・亜鉛の土壌蓄積の実態を把握するとともに、環境保全型生産の視点から、豚ぷん施用のあり方を検討する。
成果の内容・特徴
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農家畑5圃場の土壌表層部(0~15cm)の0.1M塩酸抽出法による平均値は銅3.8mg/kg、亜鉛26.4mg/kgであった。これらを豚ぷん無施用でこの地区の自然界値に近いと考えられる農業研究センター畑圃場(表層腐植質黒ボク土)の土壌表層部と比較すると、銅は3.8倍、亜鉛は4.6倍に達した(図1)。
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農家畑の土壌表層部の亜鉛の全量は昭和49年以後の豚ぷん施用回数とほぼ対応していた。全亜
鉛の農家畑平均値は157mg/kgを示し、基準値120mg
/kgを上回った。また、農業研究センター畑圃場の値の1.4倍に達した。同様に、全銅について
は農家畑平均値(163mg/kg)が1.3倍となった(
図1
)。
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農家畑において、10a当たり豚ぷん2トンを施用し、葉茎菜類や根菜類を2年間輪作すれば、銅
および亜鉛の持出量は投入量より非常に少ないため、収支としては投入された銅・亜鉛の大部
分が土壌中に蓄積することになる(
表1
および
表2
)。
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平成10年には豚ぷん施用量が通常の4割程度であったが、レタスおよびニンジンの合計の窒素
とリン酸投入量は吸収量や持出量を上回った。窒素収支によれば、20~27kg/10aが投入過剰と
なり、豚ぷん施用量をさらに削減することができる(
表3
)。
成果の活用面・留意点
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野菜畑の環境保全型養分管理のためには、窒素収支の改善が必要である。豚ぷんの施用量削減
は窒素収支の改善のみならず、銅・亜鉛の土壌蓄積の軽減にも寄与する。
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銅の基準値は「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」により、0.1M塩酸抽出法で125mg/kg
とされているが、これは水稲を対象としている。亜鉛の基準値は「農用地における土壌中の重
金属等の蓄積防止に係る管理基準」による。
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豚ぷん中の銅・亜鉛含有率は飼料への添加量の違いにより差があり、特に子豚飼料では添加量
が高い。銅・亜鉛の添加量削減のための技術開発や行政指導が必要である。
具体的データ

図1:土壌表層部の銅および亜鉛含量

表1:豚ぷんと牛ふん堆肥の成分的特徴

表2:豚ぷん施用畑の代表的な輪作体系における銅および亜鉛収支

表3:レタスーニンジン作付畑の投入量,吸収量,持出量および窒素収支(平成10年)
その他
- 研究課題名:畑作物の長期生産力維持のための生態系調和型管理技術の開発
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成10年度(平成7年~10年)