水田野菜作経営におけるキャベツ機械化一貫体系の導入条件と効果

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要約

キャベツの機械化一貫体系を水田野菜作経営へ導入するための条件と経営的効果を明らかにした。線形計画法による試算によれば,機械化一貫体系を導入するとともに借地等により経営面積を拡大すれば高い経済効果が期待できる。

  • 担当:農業研究センター・経営管理部・園芸経営研究室
  • 連絡先:0298-38-8874
  • 部会名:総合研究,経営
  • 専門:経営
  • 対象:野菜
  • 分類:行政

背景・ねらい

地域先導総合研究(三重県一志町)で開発されたキャベツの機械化一貫体系を水田野菜作経営に導入するための条件と効果を経営類型別に明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 地域の代表的な経営類型として,青壮年専従者を有する野菜専作的な中規模野菜作経営(2~3ha規模),雇用労働力を導入し借地により水稲中心の規模拡大を進める大規模水稲+野菜作経営(十数ha規模),高齢者を主な労働力とした小規模野菜作経営(1ha規模)の3類型を設定した(表1上段参照)。
  • 機械化一貫体系は,改良セル苗育苗システム,精密な圃場準備,全量基肥施肥,全自動移植機,乗用管理機による防除,汎用型野菜収穫機等の新技術を組み合わせて経営類型別に作成した(表1下段)。機械化一貫体系の導入に最低限必要な機械投資額は,中規模野菜作経営で約440万円,大規模水稲+野菜作経営では約665万円である。
  • 各経営類型にごとに慣行体系と機械化一貫体系の初期単体表をそれぞれ作成し,線形計画法で農業所得最大化を目的として演算した。この結果によれば,機械化一貫体系を導入することにより慣行体系と比較して,中規模野菜作経営ではキャベツ作付面積が2.3~2.8倍,農業所得は1.4~1.5倍と大幅に拡大する。大規模水稲+野菜作経営では,慣行体系でも移植機を使用するものとしたため,機械化一貫体系の効果が相対的に小さくなっている。小規模野菜作経営ではキャベツ作付面積は2倍近く拡大するが,育苗から移植までの作業委託料を支払うため,農業所得は殆ど拡大しない(図1,図2参照)。
  • パラメトリック分析によれば,機械化一貫体系が慣行体系よりも農業所得において有利になるのは,経営耕地面積が,中規模野菜作経営で約3ha以上,大規模水稲+野菜作経営で約7.5ha以上,小規模野菜作経営では1.5ha以上においてであった。したがって,機械化一貫体系の導入には,借地による個別経営の規模拡大,または農家集団による機械利用のための組織化が不可欠である。

成果の活用面・留意点

機械化一貫体系を普及していく上でガイドラインとして活用できる。ただし,東海地域の水田裏作及び転換畑におけるキャベツを主体とした野菜作経営を対象としているので,他地域及び他の作型を主体とした経営に適用する場合は修正を要する。

具体的データ

表1:経営類型と機械化一貫体系の特徴
表1:経営類型と機械化一貫体系の特徴

 

図1:キャベツ作付面積への効果
図1:キャベツ作付面積への効果

 

図2:農業所得への効果
図2 :農業所得への効果

 

その他

  • 研究課題名:機械化一貫体系による露地野菜作経営の経営指標の策定
  • 予算区分 :地域先導技術総合研究
  • 研究期間 :平成9~10年度