ツマグロヨコバイ耐虫性品種を加害するバイオタイプ

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要約

北陸産のツマグロヨコバイから選抜された3種類のバイオタイプの耐虫性品種に対する加害性は、主働遺伝子によって支配されており、このバイオタイプを用いて新しい耐虫性遺伝子源を探索することができる。

  • 担当:北陸農業試験場・水田利用部・虫害研究室
  • 連絡先:0255-26-3243
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物虫害
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

これまで、ツマグロヨコバイ耐虫性品種を加害するバイオタイプについては、九州のツマグロヨコバイでは調べられてきたものの、北陸産のツマグロヨコバイではバイオタイプはできないとされてきた。ここでは、幾つかの耐虫性品種・系統に対して北陸産のツマグロヨコバイからバイオタイプの選抜を試み、選抜されたバイオタイプの特性を調べることにより、耐虫性品種の安定的利用のための基礎的資料を得ようとする。

成果の内容・特徴

  • 西海164号、西海182号、中国105号、IR24、愛知80号、関東PL6の6つの耐虫性品種・育成系統上で、北陸産のツマグロヨコバイを放飼し選抜を行うと、これらの品種・系統上で正常に発育するバイオタイプが得られる(図1)。
    しかし、水稲中間母本農5号および水稲中間母本農6号ではバイオタイプは選抜されない。
  • 選抜されたバイオタイプの耐虫性品種に対する加害性から、バイオタイプが次の3つのグループ1中国105号系統、IR24系統、2西海164系統、西海182系統、3関東PL6系統、愛知80号系統に分けられる(表1)。
  • バイオタイプの品種加害性の差異は、異なった耐虫性遺伝子(Grh1、Grh2、Grh3)に基づく耐虫性機構の差によるものと考えられ、それぞれBiotype1、Biotype2、Biotype3とし、無選抜の系統をBiotype0と呼ぶ。
  • Biotype1、2、3とBiotype0とを交配したF1、F2および戻し交雑世代の調査から、Biotype1およびBiotype2の品種加害性は常染色体上の優性の単一遺伝子、Biotype3は常染色体上の劣性の単一遺伝子により支配されていると推定される。
  • バイオタイプの品種加害性の差異を利用して、新しい耐虫性遺伝子源の探索が可能である(表2)。

成果の活用面・留意点

  • バイオタイプ出現による耐虫性品種の崩壊に関する基礎的情報であるとともに、バイオタイプを用いた新しい耐虫性遺伝子源の探索手法として利用できる。

具体的データ

図1.関東PL6における北陸産ツマグロヨコバイの選抜各世代の羽化状況

 

表1.バイオタイプの耐虫性品種・系統に対する反応

 

表2.バイオタイプを用いた耐虫性遺伝子源の探索

 

 

その他

  • 研究課題名:水稲の耐虫性利用によるツマグロヨコバイ制御技術の開発
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成10年度(平成6~10年)
  • 発表論文等:
    ツマグロヨコバイ耐虫性品種を加害するバイオタイプの作出、応動昆講要41(1997)
    ツマグロヨコバイのバイオタイプの遺伝様式、応動昆講要42(1998)