水稲における種子集団の初期生育特性の評価手法

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要約

水稲における種子集団の経時的な生育変化にリチャード式を当ては、その係数から誘導された集団特性値を用いることで、直播水稲の初期生育の変化をわかりやすい4成分に分解して数量化することが可能である。

  • 担当:北陸農業試験場・水田利用部・土壌管理研究室
  • 連絡先:0255-26-3244
  • 部会名:生産環境
  • 専門:生態
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

水稲直播では、初期生育の良い種子を播種することが重要で、このような種子を生産するためには、種子集団の初期生育特性を数量的に評価することが必要である。このために従来、幾つかの方法で数量化が試みられたが、数量化された指標がわかりにくい・不安定である・指標間で互換性がない等の問題を抱えていた。そこで、これらを解決するために、集団における生育変化に特徴的な歪んだ分布にも表現できるリチャード式に当てはめて、その係数から使いやすい集団特性値を誘導し、生育変化の指標として利用することを検討した。

成果の内容・特徴

  • 歪んだ頻度分布を表現するために今まで用いられていたリチャード式は、不連続でしかも場合分けが必要であるので、数学的にも実際の計算においても取り扱いが困難であった。そこで、全ての変数について連続になるように変形したリチャード式を用いることで、頻度分布への当てはめを汎用のソフトウェアで簡単に計算できるようになる。
  • 経時的な生育変化で見られる歪んだ頻度分布にリチャード式を当てはめて、その係数から4つの集団特性値(変化率:Vi、代表値:Me、散布度:Qu、歪性:Sk)を誘導することで、その生育変化をわかりやすい成分に分解して数量化することができる(表1、図1)。
  • 水稲において、浸種時間を長くすると出芽が揃う様子が、出芽の散布度Quを算出することで数量的に示される(図2)。
    また、浸種してからの経過時間が長くなる苗立ち時の頻度分布の歪性が大きくなり、その歪性が無視できなくなる様子がSkで把握できる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 環境を変えた際の、同一種子集団の生育変化についての集団特性値を算出することで、生存率に影響を与えないような弱い環境効果を数量化することができる。
  • 4つの集団特性値によって当てはめたリチャード式が復元できるため、集団特性値が示された種子の生育が予測できる。

具体的データ

表1.当てはめに用いた関数と算出した集団特性値

 

図1.それぞれの集団特性値を変えたときの発芽曲線の変化

 

図2.浸種時間と出芽の散布度Quとの関係

 

図3.歪みを無視して算出したときのQuのずれとSkとの関係

その他

  • 研究課題名:水稲の苗立ち能力に影響を与える種子の栄養要因の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成10年度(平成10~14年)
  • 発表論文等:
    1.ロジスティック関数を用いた水稲種子群における発芽特性値の算出と種子勢の指標としての評価
    日作紀 67(別1), p56-57 (1998)  Skは改良前の定義を記載しているので注意
    2. Calculation of Population Parameters using Richards Function and Application of Indices of Growth
    and Seed Vigor to Rice Plants, Plant Production Science 2(2), (1999)