AFLP分析を用いた日本の栽培稲の精緻なDNA品種識別法
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要約
AFLP(増幅制限酵素断片長多型)法は遺伝的に近縁な稲品種をDNAレベルで分類・同定するのに適した方法であり、6種のプライマーペアの組合せで日本の栽培稲の品種、系統の75%以上の識別が可能となる。
- 担当:北陸農業試験場・地域基盤研究部・稲遺伝解析研究室
- 連絡先:0255-26-8251
- 部会名:生物工学、作物生産
- 専門:バイテク
- 対象:稲類
- 分類:研究
背景・ねらい
現在の日本の稲品種は遺伝的に近縁であり、DNAレベルでの品種識別は容易でない。系統や種子の保全のためには有効な品種識別法を確立する必要があり、これまでRAPD法などで試みられてきたが、新しいDNAマーカーを利用したより安定的、効果的な手法の開発が望まれている。AFLP(増幅制限酵素断片長多型)法は作物の染色体上の多数の独立の座位の多型を容易に調べることができ、DNA識別に効果的と考えられる。そこで、この分析法を日本の栽培稲の品種識別に適用し工夫を加えて、精緻な品種識別法を開発する。
成果の内容・特徴
- 従来のAFLP法を、放射性物質を使わずに簡便にかつ精度よく分析できるように改 良することで多数個体の稲のゲノムのAFLPバンドパターンを短時間で得、さらに特 定のバンドのクローニングが可能となる。
- 53品種の稲(日本の育成品種13、日本の在来種31、外国のジャポニカ稲7、インデイカ稲2)に本法を適用すると、6種類のプライマーペアを使ったAFLP分析により303本のフラグメントが得られ、そのうちの89本(29%)はいずれかの品種間で多型を示す。任意の2つの品種間では平均9.9個の多型がみられる。
- 実験に用いた日本の栽培稲は用いたプライマーペアの数の増加により品種識別率が向上し、6種のプライマーペアでは75%以上の品種で識別が可能となる(図1)。一方、外国のジャポニカ稲品種は4種のプライマーペアのみで100%識別可能である(図2)。
- 本法で得た結果から2つの品種間の遺伝的距離をそれぞれ計算し、品種のグループ内やグループ間で平均することにより、それらグループ内、グループ間での遺伝的ばらつ き、遺伝的隔たりを推定することができる(表1)。外国のジャポニカ稲と比べ、日本 の品種はお互いきわめて近縁である。
- AFLPフラグメント多型を用いたクラスター分析により、実験に用いた稲の類縁関 係を知ることができる(図は省略)。
成果の活用面・留意点
- 近縁な品種・系統で識別と遺伝的な類縁関係の調査に利用できる。
- より多くのプライマーペアを用いることにより、より完全な品種識別が可能となる。
具体的データ


その他
- 研究課題名:PCRによるフィンガープリントを用いた遺伝子のタギング法のイネゲノムDNAへの応用
- 予算区分:平成9年度場内プロ、経常
- 研究期間:10年度(平成9~10年)
- 発表論文等:Application of an AFLP technique that uses non-radioactive fluorescent primers to detection of genetic diversity in japanese rice cultivars and cloning of variety-specific DNA sequences, I.Ashikawa et al. (submitted)