家畜糞連用条件下での窒素放出の変化に対応した作物配置
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
夏作前の乾燥牛糞一括施用よって、夏、秋、冬作物を通して化学肥料施用と同等の収量が確保できる。しかし、牛糞からの無機態窒素放出は、ほぼ周年的に起こり、また、約570Nkg/haを超える牛糞施用は、経年的な窒素放出量の増大を招くことから、窒素溶脱防止のためには、多毛作化と窒素吸収能の高い作物を組み込んだ作付体系の導入が必要である。
- 担当:農業研究センター・耕地利用部・作付体系研究室
- 連絡先:0298-38-8532
- 部会名:作物生産
- 専門:栽培
- 対象:麦類・飼料作物類・根菜類
- 分類:研究
背景・ねらい
化学肥料全面代替を前提とした家畜糞連年施用条件では、未分解物蓄積に伴う窒素放出量や放出パターンの経年変化が生じる。そこで、このような変化に対応した季節的な作物配置と施用
履歴に伴う作付体系の切り替えについて検討する。
成果の内容・特徴
-
乾燥牛糞の連用条件における土壌の全窒素は、連用初期段階で顕著に増加するが、連用に伴って増加程度は縮小し、特に単年施用量が576Nkg/ha以上の水準では、連用4年目から施用量に応じた水準で平衡状態を示す(図1)。
-
乾燥牛糞の夏作前一括施用条件での秋作および冬作物の窒素吸収量の合計は、夏作物と同等ないし上回ることから、窒素回収という面でも秋、冬作物の配置が不可欠である(図2、図3)。
-
化学肥料並の乾物収量が得られる乾燥牛糞の単年施用水準(窒素換算)は、トウモロコシー大麦の2毛作体系では376Nkg/ha(連用1~3年)、トウモロコシーダイコンーライ麦およびギニアグラスーダイコンーライ麦の3毛作体系では576~768Nkg/ha(連用4年目以降)である(表1)。
-
乾燥牛糞施用に伴う土壌全窒素の変化を指標に各作付体系の窒素吸収量を比較すると、連用初期段階や低施用水準など土壌全窒素の蓄積が進まない条件ではトウモロコシー大麦の2毛作体系が、それより高くなるとトウモロコシーダイコンーライ麦の3毛作体系が、さらに蓄積が進むとギニアグラスーダイコンーライ麦の
3毛作体系が、それぞれ最も高い窒素吸収量を示す(図4)。
成果の活用面・留意点
- 家畜糞を活用した作付体系の策定のための指標となる。
-
牧草類の導入は、窒素回収という面では有効な手段であるが、収穫物中の硝酸態窒素の高濃度蓄積の問題があることから留意が必要である
具体的データ

表1:乾燥牛糞施用条件での栽培作物の収量性

図1:乾燥牛糞の連用に伴う土壌表層(0-15cm)の全窒素の集積

図2:連用5年目の窒素の季節的配分(768Nkg区)

図3:乾燥牛糞連用条件における作物吸収窒素と冬作跡地無機態窒素の推移

図4:乾燥牛糞連用条件における表層土壌の全窒素集積と各種作付体系の窒素収集量との関係
その他
- 研究課題名:家畜由来有機物を活用した作付体系の策定
- 予算区分 :物質循環
- 研究期間 :平成10年度(平成4~10年)