前作の種類がアーバスキュラー菌根菌と後作の生育・収量に及ぼす影響

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要約

カンショ、ダイズ等のアーバスキュラー菌根菌宿主作物の跡地に比べ非宿主であるアブラナ科作物や休閑の跡地では、同菌の胞子密度が低く、後作物の生育は劣る。しかし、アブラナ科作物や休閑が後作物の生育に及ぼす影響は、それらの跡地に宿主作物を作付けることで2作目以降みられなくなる。

  • 担当:農業研究センター・耕地利用部・作付体系研究室
  • 連絡先:0298-38-8532
  • 部会名:作物生産
  • 専門:栽培
  • 対象:飼料作物等
  • 分類:研究

背景・ねらい

アーバスキュラー菌根菌(VA菌根菌)は作物の根に共生し、作物の養水分吸収を促進すると考えられている。最近,このアーバスキュラー菌根菌が作付体系における作物の前後作適性に深く関わっていることが明らかにされつつある。そこで,前作の違いがアーバスキュラー菌根菌の胞子密度,作物への感染に与える影 響を調査するとともに後作の生育・収量との関連性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • アーバスキュラー菌根菌の非宿主であるアブラナ科作物や休閑の跡地では,宿主であるカンシ ョ,ダイズ及びデントコーンの跡地に比べて胞子密度や後作の感染率が低くなり,特にアブラナ 科作物の強度の連作跡地では,これらの傾向が顕著である( 表1 )。
  • 異なる作付体系跡地に作付した,スィートコーン,ダイズ及びデントコーンの初期生育は,アー バスキュラー菌根菌の胞子密度が高い跡地ほど促進される( 図1 )。
  • アーバスキュラー菌根菌の胞子密度,感染率が特に低かったアブラナ科作物の連作跡地のスィ ートコーン,ダイズは減収した( 表2 )。
  • アーバスキュラー菌根菌の胞子密度が低かった非宿主作物と休閑の跡地においても,夏作に宿 主作物を1作導入することにより胞子密度は宿主作物の跡地と同等になり,2作目以降の作物の 初期生育には作付前歴の影響が見られなくなる( 表1 , 表3 )。
  • これらのことから,前作の違いが後作の生育・収量に及ぼす影響は,アーバスキュラー菌根菌の 宿主作物の跡地に比べ非宿主作物の跡地では胞子密度が低下し,後作の養水分吸収に差が生じ ることが一要因であると推定される。

成果の活用面・留意点

  • 合理的な作付体系策定のための資料となる。
  • 関東地域の火山灰土壌(黒ボク土)における結果であるので,他地域や火山灰土壌以外では,別 途検討を要する。

具体的データ

表1:異なる作付体系の跡地におけるアーバスキュラー菌根菌胞子密度(個/100g乾土)と後作の感染率(%)
表1:異なる作付体系の跡地におけるアーバスキュラー菌根菌胞子密度(個/100g乾土)と後作の感染率(%)

 

図1:各作付体系跡地のアーバスキュラー菌根菌の胞子密度と後作の初期生育との関係
図1:各作付体系跡地のアーバスキュラー菌根菌の胞子密度と後作の初期生育との関係

 

表2:異なる作付体系跡地におけるスィートコーン雌穂重とダイズ子実重
表2:異なる作付体系跡地におけるスィートコーン雌穂重とダイズ子実重

 

表3:異なる作付体系跡地におけるデントコーンとイタリアンライグラスの初期生育(草丈:cm)
表3:異なる作付体系跡地におけるデントコーンとイタリアンライグラスの初期生育(草丈:cm)

 

その他

  • 研究課題名:1.牧草・飼料作物の連・輪作と生産性との関係解明
    2.畑作物の前後作適性に関わる要因の解明
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :1.平成10年度(平成7~10年),2.平成10年度(平成9~13年)