牛糞の施肥量を化学肥料の1.5倍以下に抑えた栽培で選択できる野菜の種類
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要約
化学肥料を牛糞に環境保全的に代替するため、施用量を窒素成分で化学肥料の1~1.5倍に抑える場合は、スイートコーン、ダイコン、メロンなどが適し、キャベツ、ハクサイなどは十分な生育をしない。また、化学肥料に比べ流亡量が抑えられ、5年間の連用で土壌窒素の蓄積が見られるが、野菜の生育が向上するような連用効果はない。
- 担当:農業研究センター・耕地利用部・野菜生産研究室
- 連絡先:0298-38-8529
- 部会名:作物生産
- 専門:栽培
- 対象:葉茎菜類,果菜類
- 分類:研究
背景・ねらい
野菜生産においては多量の化学肥料の施用が行われ、一方、畜産では系内で有効利用できない廃棄物が増大している。そこで、野菜の化学肥料による施肥をこれらの有機物で代替しようとする。しかし、牛糞は肥効率が低く、窒素で化学肥料の3倍程度を施用する必要があるとされ、施肥量の多い野菜に適用するには問題が多い。そこで環境保全的な牛糞施用法と野菜の収量維持とを両立させるための有効化促進法、適作物などを明らかにしようとした。
成果の内容・特徴
牛糞施用を窒素で化学肥料の1.5倍以内に抑えた時、どの種の野菜の生産が可能か、この施用量での連用が土壌窒素などの蓄積と収量性の変化に及ぼす影響を明らかにした。
- 牛糞施用量を抑えても野菜による窒素吸収量は少ないので圃場に残存または流亡する窒素の合計は化学肥料を上回るが、土壌蓄積量が多いので、流亡量は抑えられる。しかし、野菜はこの蓄積養分を利用できず、連用8作目でも生育が向上せず、また、無肥料に切り替えると直ちに生育が低下するなど連用効果もみられない(図6,図1a,図1b,図2,図3,図4)。
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スイートコーンは乾燥牛糞1倍量(化学肥料の窒素量に対し)・黒マルチ条件で化学肥料と同等の生育をし、経年的にも収量が維持される。また、牛糞施用下での透明マルチ、トンネルは、黒マルチより初期の生育を促進するが、最終的な収量に効果はない(
図1a,図1b)。
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スイートコーンの後作で、無マルチの秋キャベツは、乾燥牛糞1.5倍量施用にもかかわらず、また、連用で土壌全窒素が増加(図6
)しても化学肥料より生育が悪い(図2)。春作でも同様に劣り、生育量の大きいハクサイでも劣る(図3)が、ダイコンは化学肥料並に生育する(図4)。
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ハウスメロンでは、乾燥牛糞1.5倍量施用の初年目から連作3年目(乾燥牛糞連用5作目)まで、化学肥料と同等以上の生育・収量が継続して得られる(図5)。
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牛糞で生育が悪い野菜は初期から後期まで一貫して生育が悪く、生育後半でも生育が良くなることはない。
成果の活用面・留意点
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緩効性である牛糞などの有機物を環境に配慮しながら化学肥料に代替して使用する時の作物選
択の指標となる。
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牛糞連用により土壌窒素が蓄積した条件下でも、供試した全ての野菜の生育が特には向上せず、野菜による蓄積養分の利用は困難で、牛糞の窒素施用量を化学肥料程度に抑えながら収量を維持するには野菜の種類の選択が重要であることに注意する必要がある。
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長期的には土壌中に蓄積した窒素を普通作物などの導入により回収する必要がある。
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牛糞施用による土壌物理性改善効果は大きかったが、本研究は物理性の良好な黒ボク土壌で行ったため、野菜の生育には反映せず、他のタイプの土壌には適用できない。
具体的データ

図1a
:乾燥牛糞連用に伴うスイートコーン収量の推移(黒マルチ)

図1b
:乾燥牛糞連用に伴うスイートコーン収量の推移(透明マルチ

図2
:乾燥牛糞連用8作目の秋キャベツの収量

図3
:乾燥牛糞連用9作目の葉菜の収量(春作黒マルチ)

図4
:乾燥牛糞連用10作目での大根の生育(秋作)

図5
:ハウスメロンの果実肥大に対する乾燥牛糞の効果(連用5作目)

図6
:乾燥牛糞連用9作による土壌窒素の蓄積

表1
:供試乾燥牛糞の成分(乾物当たり)
その他
- 研究課題名:有機物の施用戦略の策定による葉花果菜の高品質生産システムの構築
- 予算区分 :別枠
- 研究期間 :平成10年度(平成4~10年)