実験室内で塊茎形成を比較観察できるショクヨウガヤツリ簡易培養法
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要約
ショクヨウガヤツリを寒天培地で、10および16時間日長で培養することにより、省スペースで連続的に塊茎形成が比較観察できる。10時間日長では、約3週間で塊茎が形成され、16時間日長では塊茎が形成されない。本法による塊茎形成は、土耕栽培法と同様、ジベレリンの添加で抑制される。
- 担当:農業研究センター・耕地利用部・畑雑草研究室
- 連絡先:0298-38-8426
- 部会名:作物生産
- 専門:雑草
- 対象:雑草類
- 分類:研究
背景・ねらい
ショクヨウガヤツリは、近年、飼料畑や水田に侵入し、深刻な雑草害をもたらしている。本雑草は、主な繁殖器官として地下に休眠性を持つ塊茎を形成する多年生雑草であり、既存の防除法では防除困難である。
塊茎形成を特異的に阻害する合理的防除法の開発のためには、塊茎形成機構の解明が必要である。そこで、塊茎形成の阻害あるいは促進要因を探索して塊茎形成機構の解明を進めるため、実験室内で塊茎形成を比較観察できる簡易培養法を作製する。
成果の内容・特徴
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寒天培地(1%、耐熱透明容器)上に、予め次亜塩素酸ナトリウム(1%有効塩素濃度)で表面殺
菌して萌芽させたショクヨウガヤツリの塊茎を静置する。室温
27°C、光条件を10時間日長と16時間日長にそれぞれ設定した照明付培養器に入れて、容器の外
側から目視により観察する(
図1
)。
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本法において形成される根茎先端部が肥大した器官は、大きさは、通常の塊茎の約1/5である
が、休眠性、外部形態、内部形態(細胞分裂によって肥大)等の特徴から塊茎と認められる(
図2
)。
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10時間日長条件では、培養後約2週間で根茎が出現し、その後約1週間で塊茎形成が認められる
が、16時間日長条件では、根茎は出現するものの塊茎形成は認められない(
図3
)。
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土耕試験法と同様、50ppmのジベレリン(GA3)を茎葉に処理した結果、10時間日長における塊
茎形成が約50%阻害され、その萌芽力も低かった。GA3の処理量は土耕試験法の1/1000にするこ
とができた(
表1
)。
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本法は、照明付培養器を使用するだけで、塊茎形成状況を連続的に観察することができる。ポ
ットによる土耕試験法と比較すると、スペースを約1/30、試験期間を約1/2以下にすることが
できるので効率的である(
表1
)。
成果の活用面・留意点
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本法の2つの日長条件を利用して、塊茎形成の阻害、促進要因の両方が探索できる。
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本法は、ポット試験や圃場試験を行う前段階で、ショクヨウガヤツリの反応を簡易に把握する
方法として利用できる。
具体的データ

図1:寒天培地による簡易培養法

図2:簡易培養法(10時間日長)で形成された塊茎の外観(A)と横断面(B)(横断面はa-bで切断,矢印は維管束)

図3:簡易培養法における日長条件が根茎と塊茎の形成に及ぼす影響

表1:塊茎形成における試験法の比較
その他
- 研究課題名:多年生畑雑草ハマスゲの塊茎形成機構の解明
- 予算区分 :特別研究「環境調和型水田雑草制御技術の開発」・経常
- 研究期間 :平成10年度(平成6年~10年)