大麦のF1品種育成に有用な半矮性突然変異遺伝子

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要約

大麦の種子に対してアジ化ナトリウムを変異原とする突然変異処理を行い,単因子・不完全優性の半矮性突然変異遺伝子を得た。この半矮性突然変異遺伝子は優れた農業特性を示し,F1品種の育成に有用である。

  • 担当:農研センター・作物開発・大麦育種研
  • 連絡先:0298-38-8862
  • 部会名:作物生産
  • 専門:育種
  • 対象:麦類
  • 分類:研究

背景・ねらい

大麦の多収性育種法としてF1育種法が考えられる。その場合ヘテローシス発現によって長稈となるので優性の半矮性遺伝子を利用できることが望ましい。しかし,既存の優性の半矮性遺伝子は極短稈および極晩生を示し問題がある。そこで有用な優性の半矮性遺伝子の獲得を目的として,突然変異処理を行い,得られた半矮性突然変異体について遺伝子分析を行うとともにその特徴を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 大麦系統GBC695の種子に対してアジ化ナトリウムを変異原とする突然変異処理を行い,処理当代において1個体の半矮性突然変異体M132を得た。
  • 遺伝子分析の結果から,単因子の半矮性突然変異遺伝子が誘発されたことが明らかとなった( 図1 , 表1 )。
  • この半矮性突然変異遺伝子は不完全優性の稈長短縮効果をもち,ヘテロ接合体とホモ接合体の場合にそれぞれ約20%と約40%の稈長短縮を示した。この稈長短縮は各節間のほぼ同程度の短縮 によるものであった( 表2 )。
  • この半矮性突然変異遺伝子は多面発現として不完全優性の穂長短縮効果をもち,出穂性にはほ とんど影響を与えなかった( 表2 )。

成果の活用面・留意点

この優性の半矮性突然変異遺伝子は,出穂性に影響を与えず,ヘテロ接合体の場合に最適な稈長短縮を示すので,F1品種の育成に有用である。また通常の固定品種への利用の可能性もある。

具体的データ

図1
:正常および半矮性交配組合せのF2集団における稈長の度数分布
図1 :正常および半矮性交配組合せのF2集団における稈長の度数分布

 

表1
:半矮性交配組合せにおける稈長のF3検定(ランダム抽出のF3 25系統を調査)
表1 :半矮性交配組合せにおける稈長のF3検定(ランダム抽出のF3 25系統を調査)

 

表2
:半矮性交配組合せのF2集団における3つの遺伝子型の主要形質平均値
表2 :半矮性交配組合せのF2集団における3つの遺伝子型の主要形質平均値

 

その他

  • 研究課題名:短稈および半矮性突然変異系統の遺伝分析
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成9年度(平成8~9年度)