アミロース含量の異なる材料を用いた小麦澱粉の糊化特性
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
モチ系統とウルチ系統の正逆交雑によるF1種子から、既存の品種系統にはみられないアミロース含量をもつ澱粉が得られる。これらの澱粉では親系統よりも最高粘度が高く、F1種子と同等のアミロース含量になるようにモチ・ウルチ澱粉を混合した試料では最高粘度が低く、かつ各々の澱粉由来の糊化ピークが現れる。
- 担当:農業研究センター・作物生理品質部・流通利用研究室
- 連絡先:0298-38-8868
- 部会名:作物生産
- 専門:食品品質
- 対象:麦類
- 分類:研究
背景・ねらい
小麦澱粉中のアミロース・アミロペクチンの量比は小麦粉の加工特性に大きく影響する。近年、モチ性の小麦系統が育成され、モチ系統とその親系統の正逆交雑及び試料の混合により、既存の品種系統では認められないアミロース含量をもつ小麦澱粉が得られる。そこでこれらの試料を用いてアミロース・アミロペクチンの量比が澱粉の糊化及び老化特性に与える影響を解明する。
成果の内容・特徴
-
モチ6系統Wx-1、Wx-2(Bai Huo/西海173号)、Wx-3、Wx-4(Bai
Huo/関東107号)、K107Wx1、K107Wx2(関東107号由来の突然変異系統、アミロース含量0.8~1.4%)とその親系統であるウルチ2系統(18.3~24.6%)の正逆交雑によってF1種子を得た。これらの種子の澱粉のアミロース含量は、交雑の正逆で異なり、モチ系統が花粉親の場合は13.4~17.5%、ウルチ系統が花粉親の場合は6.7~9.5%である。この違いは重複受精にともなう遺伝子の数量効果によるものと推定できる。
-
示差走査熱量測定装置(DSC)を用いて、上記のF1種子の澱粉と、これらと同等のアミロース含量をもつモチ澱粉とウルチ澱粉を混合した試料の各糊化特性は、アミロース含量の多い方が糊化終点温度及び吸熱エンタルピーが小さくなる(図1)。
-
アミロース含量とDSCの糊化開始温度及び糊化ピーク温度(図2
)の関係は、F1種子の澱粉とそれと同等のアミロース含量をもつ混合試料とでは異なる。この結果は澱粉結晶構造の違いに由来するものと推定できる。
-
ラピッドビスコアナライザー(RVA)で測定した最高粘度は、モチ澱粉よりもF1種子の澱粉の方が高い値を示す(図3)。F1種子とアミロース含量を等しくした混合試料は糊化時のピークが2個に分かれ、最高粘度は低い(図4)。
成果の活用面・留意点
アミロース含量が糊化特性に与える影響は、試料の由来、調製方法で異なるため、ブレンドした小麦粉等の評価の際には、用途に適した評価方法や試料の由来による適性等を考慮する必要がある。
具体的データ

図1:アミロース含量と糊化時の吸熱エンタルピー

図2:アミロース含量とDSC測定による糊化ピーク温度

図3:F1種子とその親系統から精製した澱粉のRVAによる糊化特性

図4:関東107号とWx-4から精製した澱粉の混合試料のRVAによる糊化特性
その他
- 研究課題名:もち性等の小麦澱粉の化学構造と加工特性の関連の解明
- 予算区分 :総合的開発(新用途畑作物)
- 研究期間 :平成9年度(平成8~10年度)