葉色によるイネ体のいもち病感受性評価

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要約

測色計を用いた葉色値により,イネ体のいもち病感受性程度を評価できる。コシヒカリ,ササニシキでは葉色値(明度)が38~39以下ではいもち病感受性が高くなる場合がある。

  • 担当:農業研究センター・病害虫防除部・水田病害研究室
  • 連絡先:0298-38-8940
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物病害
  • 対象:稲類
  • 分類:指導

背景・ねらい

近年,いもち病抵抗性弱品種の作付け急増に伴い,イネいもち病多発年が頻発する傾向にあり,適切な肥培管理の重要性が指摘されている。そこで窒素追肥を中心にイネ体の栄養状態といもち病感受性の関係を明らかにし,施肥によるイネ体のいもち病感受性変動をより的確・簡便に数量的に評価する技術を確立する。

成果の内容・特徴

  • 分光測色計(ミノルタ社製CM-503is,反射光を利用)は色彩の測定を行い,明度,彩度,分光反射率に数値化できる。種々の生育条件のイネ体の葉色を本分光測色計で測定すると,明度,彩度とも数値が低い場合はいもち病に対する感受性が高く,数値が高いと感受性は低い(図1)。
  • イネ品種コシヒカリおよびササニシキでは,分光測色計による測定で明度値38~39,彩度値24~26を境に,数値が低いと感受性の高い場合が多く,数値が高いと感受性は常に低い(図1)。
  • 以上から分光測色計を用いた葉色値の測定により,イネ体のいもち病感受性を評価できる。この情報は適切な追肥といもち病の制御の意思決定に有用である。
  • 葉緑素計(ミノルタ社製SPAD502,透過光を利用)の測定値は葉身の葉緑素含量,全窒素含量と相関が高いが,追肥後のイネ体感受性の推移とは一致せず(図2),いもち病感受性を必ずしも的確に評価できない。一方,分光測色計の測定値はこの際のいもち病感受性変化のパターンとよく一致しており(図3),イネ体感受性を的確に評価できる。
  • 遠隔測定型色彩色差計(ミノルタ社製CS-100)はカメラのように非接触で一定面積の色彩を測定できる。本機よる測定値と上記の接触型分光測色計(葉1枚1枚に押し当てて測定する)の測定値の間には高い相関関係が認められ(図4),圃場におけるイネ体のより簡便な葉色測定には遠隔測定型色彩色差計を利用できる可能性が示唆された。

成果の活用面・留意点

  • イネ品種ササニシキ,コシヒカリおよびキヌヒカリでは,冷害等不良気象条件の年および常発地において葉色値(分光測色計),明度38~39以下を多発危険領域とする。
  • イネ品種により本来持つ葉色に差があることから,品種別の評価基準を作成する必要がある。

具体的データ

図1:葉いもちの発病程度と接触型分光測色計による葉色値の関係
図1:葉いもちの発病程度と接触型分光測色計による葉色値の関係

 

図2:追肥後のイネ体のいもち病感受性およびSPADによる葉色値の推移
図2:追肥後のイネ体のいもち病感受性およびSPADによる葉色値の推移

 

図3:追肥後のイネ体の葉色値(明度)の推移
図3:追肥後のイネ体の葉色値(明度)の推移

 

図4:遠隔測定型色彩色差計と接触型分光測色計による測定値の関係
図4:遠隔測定型色彩色差計と接触型分光測色計による測定値の関係

 

その他

  • 研究課題名:低投入栽培における病害発生モデルの開発と病害抑制システムの最適化
  • 予算区分 :一般別枠「物質循環」・経常
  • 研究期間 :平成10年度(平成4年~10年度)