熱水土壌消毒法によるトマト萎凋病の防除

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要約

熱水ボイラーで発生させた95°Cの熱水を土壌表面から200L/・注入することにより、地下30cm地点で、50°C以上の土壌温度が8時間持続し、フザリウム菌は死滅した。この熱水土壌消毒法によりトマト萎凋病の防除が可能である。

  • 担当:農業研究センター・病害虫防除部・畑病害研究室
  • 連絡先:0298-38-8836
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物病害
  • 対象:果菜類
  • 分類:指導

背景・ねらい

現在、2005年に全廃される土壌消毒用臭化メチルの代替技術の開発が急務とされている。そこで、熱水土壌消毒法について、熱水の散水量、温度、散水方法、処理前の土壌条件等の検討を通して本方法を効率化し、代替技術として確立することを目的とした。

成果の内容・特徴

  • 本研究で試作した熱水ボイラー(RC-25-SP型)は、灯油またはA重油を燃料に用い、95°Cの熱水を毎分50Lの安定した流量で作り出すことができ、運転に特別な資格も要しない。
  • 50°C、45°C及び40°Cにおける土壌中のフザリウム菌の死滅時間は、それぞれ8時間、2日及び3日と推測された(図1)。
  • 土壌表面から95°Cの熱水を200L/・注入することにより、地表下30cm地点で、50°C以上の土壌温度が約8時間持続した(表1)。
  • トマト萎凋病菌(レース2)を接種した圃場で、熱水処理を行い、トマト(桃太郎)に対する萎凋病の防除効果を検討ところ、熱水200L/・処理及び熱水150L/・処理後の温水追加給水処理(50°C、50L/・)により高い防除効果が認められた(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 熱水処理前の土壌は、より乾燥させておくと温度上昇効果が高い。また、土壌の透水性が不良であると、多量の熱水注入が困難であるので、透水性不良の圃場はこれを改善しておく必要がある。
  • 熱水150L/・処理後の温水追加給水処理(50°C、50L/・)は、地表下30cmまでの温度上昇に関して、熱水200L/・処理と同程度の効果があり、熱水使用量の削減に利用できる(表1)。
  • 熱水土壌消毒法はホウレンソウ萎凋病、ダイズ黒根腐病、コムギ立枯病、ハクサイ根こぶ病、キタネグサレセンチュウに対しても防除効果があることが報告されている(農研センター)。
  • 処理面積10aあたりの燃料(灯油)の使用量は、熱水(95°C)200L/・処理の場合、夏期(水温20°C程度)で概ね2,000L、冬期(同10°C程度)では同4,000Lである。

具体的データ

図1:処理温度の違いによるフザリウム菌の死滅時間の変化
図1:処理温度の違いによるフザリウム菌の死滅時間の変化

 

表1:各土壌深度における50°C以上持続時間
表1:各土壌深度における50°C以上持続時間

 

表2:熱水土壌消毒によるトマト萎凋病防除効果
表2:熱水土壌消毒によるトマト萎凋病防除効果

 

その他

  • 研究課題名:土壌消毒用臭化メチルの代替技術の開発に関する研究
  • 予算区分 :地球環境(臭化メチル)
  • 研究期間 :平成10年度(平成8年~平成10年)