未攪乱土壌の圃場インキュベーションによる畑地からの脱窒量の推定
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要約
トウモロコシ畑から採取した未攪乱土壌の脱窒速度を現場温度水分条件下でアセチレン阻害法を適用して測定した。調査した4土壌のうち、赤黄色土の脱窒量が最も多く少なくとも18kgN/ha以上であったのに対し、他の土壌では2kgN/ha以下であった。また、全ての土壌で表層よりもその下層(10-20cm)の脱窒量が多かった。
- 担当:農業研究センター・土壌肥料部
- 連絡先:0298-38-8828(畑土壌肥料研究室)
- 部会名:生産環境
- 専門:土壌
- 対象:
- 分類:研究
背景・ねらい
近年、農耕地からの硝酸態窒素の環境負荷が大きな問題となっているが、農耕地の窒素収支を把握するためには脱窒の定量的評価が不可欠である。しかし、圃場条件下で脱窒を実測することが困難なために、我が国では利用できるデータがほとんどない。
本成果では、畑土壌から採取した未攪乱のコアにアセチレン阻害法を適用し、圃場条件下で脱窒を測定することにより脱窒による窒素損失量を推定しようとした。
成果の内容・特徴
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農業研究センター造成畑圃場の4種の土壌(淡色黒ボク土、厚層多腐植質黒ボク土、灰色低地土、赤黄色土:各堆肥20t/ha連用区)について、トウモロコシ栽培期間中(5月21日~8月24日)の作土表層(0~10cm)とその下層(10~20cm)の脱窒速度を、未攪乱土壌圃場インキュベーション法(図1参照)を用いて実測した。
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畑土壌中の脱窒速度は、赤黄色土で最も速く、次いで灰色低地土、厚層多腐植質黒ボク土、淡色黒ボク土の順であった。また、全ての土壌で表層よりもその下層の方が大きな値が得られた(
図2)。
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トウモロコシ栽培期間中における畑土壌からの脱窒量の積算値を求めると、下層土の寄与がそのほとんどを占め、最も値の大きかった赤黄色土では、少なくとも18kgN/ha以上が脱窒により失われていると見積もられる(図3)。
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供試圃場の土壌三相分布を調べると、全ての土壌で深さ10~20cmの層位の気相率が低く(固相率が高く)、それが下層で脱窒速度が大きい主要因と推察される(図4)。
成果の活用面・留意点
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本研究では、20cm以下の層は調べていないので、土壌全体の脱窒積算量としてはもっと増える可能性がある。
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アセチレン阻害法では、硝化作用が完全に進まなくなるので、土壌中の硝酸態窒素濃度の低いときには脱窒の推定値が過小評価になる可能性がある。
具体的データ

図1測定手法の略図と手順

図2畑土壌中の層位別脱窒速度の変化

図3トウモロコシ栽培期間(5~8月)における畑土壌からの脱窒量

図4供試圃場における三相分布
その他
- 研究課題名:農業生態系の物質循環機能を活用した有機物資源の有効利用に関する研究
- 予算区分 :科振調(生活・社会基盤研究)
- 研究期間 :平成10年(平10~12年)