台地畑ー谷津田連鎖系における水田・湿地の窒素浄化機能

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要約

畑地主体の集水域からの窒素流出負荷が32.6kg/ha/yrであるのに対し、畑地湧水が水田・湿地を通過する集水域からの負荷は1.7kg/ha/yrにすぎず、実際の台地畑ー谷津田連鎖系において水田・湿地は極めて効果的に窒素を浄化している。

  • 農業研究センター・土壌肥料部・水質保全研究室
  • 連絡先:0298-38-8829
  • 部会名:生産環境
  • 専門:環境保全
  • 対象:
  • 分類:研究

背景・ねらい

台地畑と粋で円・湿地が連鎖した流域では、台地畑からの溶脱窒素が水田・湿地で浄化され、流域からの窒素流出負荷を低減できると考えられる。窒素濃度の高い畑地からの湧水を、一定流量で年間潅漑した谷津田試験田(茨城県霞ヶ浦町、旧出島村)の窒素除去速度を調査し、谷津田の年間の窒素浄化可能量を明らかにする。さらに、地下に不透水層を有し、畑地からの湧水が、水田・湿地を通過して表流水として系外へ流出する流域(茨城県石岡市)の窒素フローを解明し、年間潅漑をしてない実際の台地畑ー谷津田連鎖系内の水田・湿地の浄化機能を評価しようとした 。

成果の内容・特徴

  • 窒素濃度5~6mg/Lの台地畑からの湧水を、流量を精密に制御して年間潅漑すると、谷津田試験 田(1994~1995年)における窒素浄化量は、水稲作付け期間に120kg/ha、非作付け期に140~ 180kg/ha、年間では260~300kg/haとなる。( 図1 )
  • 畑地主体の集水域(C2)から流出する表流水の平均窒素濃度は、16.9mg/L、年間(1996年5月 ~1997年4月)の窒素流出比負荷量は32.6kg/haであり、窒素施肥量の23.6%が、表流水として 集水域外に流出している( 図2 )。
  • 一方、畑地からの湧水が水田・湿地を通過する集水域(C1)からの表流水の平均窒素濃度は 0.5mg/L、窒素流出比負荷量は1.7kg/ha/yrで、施肥量の2.6%にすぎない( 図2 )。
  • C1集水域の畑地からも、施肥窒素の23.6%が流出しているとすると、C1集水域の水田・湿地の 窒素浄化量は、202kg/ha/yrとなる。これは、 精密に年間潅漑した谷津田試験田の浄化量の7割程度の値であり、特に潅漑の制御等をしてな い実際の台地畑ー谷津田連鎖系においても、水田・湿地の窒素浄化 機能は極めて有効に働いていることが分かる。

成果の活用面・留意点

台地畑^谷津田連鎖系の持つ窒素流出負荷低減効果が明らかになり、地形連鎖機能の保全に配慮した、農村地域の環境管理計画作成に向けての基礎資料となる。

具体的データ

図1:畑地湧水を流量を精密に制御して潅漑した谷津田試験田(茨城県霞ヶ浦町)の窒素浄化機能
窒素除去速度:水稲作付け期は1994年6~8月の、水稲非作付け期は1994年10月~
1995年3月の平均値
図1:畑地湧水を流量を精密に制御して潅漑した谷津田試験田(茨城県霞ヶ浦町)の窒素浄化機能 窒素除去速度:水稲作付け期は1994年6~8月の、水稲非作付け期は1994年10月~1995年3月の平均値

 

図2:調査流域(茨城県石岡市)の概略図と年間(1996年5月~1997年4月)窒素フロー
*文献値、**推定値
図2:調査流域(茨城県石岡市)の概略図と年間(1996年5月~1997年4月)窒素フロー *文献値、**推定値

 

その他

  • 研究課題名:連鎖系内養分フローの解明と制御による畜産廃棄物還元容量の増強
  • 予算区分 :一般別枠「物質循環」
  • 研究期間 :平成10年度(平成4~10年)