営農目標の選好順位を明示的に組み込んだ計画モデル
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
営農集団の運営において構成員間で競合する目標の調整を図るため、営農目標に関する選好が個々の構成員によって異なることに着目し、集団の目標の選好順位の差異を明示的に組み込んだ計画モデルを作成した。
- 担当:農業研究センター・経営管理部・経営設計研究室
- 連絡先:0298-38-8414
- 部会名:経営
- 専門:経営
- 対象:
- 分類:指導
背景・ねらい
農業労働力の不足や高齢化が進む中にあって、近年、集落単位で営農集団を設立しようとする動きも見られる。しかしその一方で、集団内の構成員の意識が多様化してきているために、営農目標が個々の構成員によって異なり、集団運営における意思決定がこれまで以上に困難になってきている。このため、組織の運営において構成員間で競合する目標の合理的な調整を支援するための計画手法を開発する。
成果の内容・特徴
集落営農を全県的に推進している滋賀県A町B営農集団を事例に、開発した計画モデルの適用手順を具体的に示すと、次のとおりである(B営農集団は、集落のほぼ全戸からなる91戸により構成され、全構成員の出役労働によって、約72haの農地で移植水稲と直播水稲を中心とした生産を行っている集団である)。
- まず、聞き取り調査やアンケート調査等に基づいて対象集団の目標構造を整理する。B集団の場合、目標構造は、表1のように整理される。すなわち、集団の運営に関しては、集落内農地の維持管理(Z)、10a当たりの配当金の確保目標(Y)、省力化目標(L)の3つの目標があり、それらの選好順位(目標達成の順位)は現状の営農維持を重視するグループ1とより一層の省力化を望むグループ2で異なる。
- 次に、グループ間による目標構造の違いに着目し、各グループの目標選好順位の差異を明示的に組み込んだ計画モデルを、目標計画法の付順方式(目標に優先順位をつける)で作成する。計画モデルの初期単体表の概要は、表2及び表3に示すとおりである。これまでは、営農タイプの差異に着目して類型化を行い単体表を作成することが多かったが、本モデルでは、各目標に対する選好の差異に着目して類型化を行い、その類型ごとの目標順位を考慮して最適化を行っている。これにより、本モデルでは、集団全体の最適解(集団構成員の2つのグループへの所属割合でウエイト付けを行った調整解)だけでなく、2つのグループの各々の目標への選好だけで求めた最適解、即ち、グループ1の選好でできるだけ最適化を図ろうとした解、グループ2の選好でできるだけ最適化を図ろうとした解も同時に示すことが可能となり、構成員間で競合する営農目標を調整するための判断材料を提供できる(表4)。
成果の活用面・留意点
- 目標の種類や数、構成員のグループ数等が、例示したB集団と異っているような場合でも、本情報は適用可能である。
- パソコンでモデル計算するためのソフトとしては、リグレット関数等の設定が自動化されているCLP、XLP、micro-NAPS with FSMEの利用が推奨される。
具体的データ

表1:B集団における目標構造の概要

表2:モデル(初期単体表)の概要

表3:グループ1とグループ2に共通するサブ単体表の設定(主な部分のみ)

表4:結果の概要
その他
- 研究課題名:営農集団における多目的問題の計画手法の開発
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平10年度(平7~10年度)