農業事例ベースの概念検索システム

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

農業事例ベースのための検索システムを開発した。システムは事例中の語の出現頻度をもとに計算された概念ベクトルを使って、利用者の自然言語文による問い合せに対して関連性の高い事例を簡便に精度よく検索することができる。

  • 担当:農業研究センター・研究情報部・情報解析研究室
  • 連絡先:0298-38-8948
  • 部会名:情報研究
  • 専門:情報処理
  • 対象:
  • 分類:研究

背景・ねらい

農業経営、生産技術など農業が扱う事象やデータは多様で個性を持ち、曖昧性、地域性が強く、予測や制御が困難な要素を含む。しかもそれらが相互に関連しながら複雑に作用しているため、その全体の系をモデルを用いて的確に記述することが難しい。 一方、過去の成功・失敗事例は経験した問題やその解決策を全体として記述しているため、それを再利用して新たな問題解決を図ることは極めて有効であると考えられる。また新しい事例を蓄積していくことで農業の持つ地域性を扱うことができると考えられる。したがって農業事例ベースを構築し、それらの事例を用いることは農業における意思決定を支援する上で有効と考えられる。 ここでは利用者の曖昧な問い合わせからでも的確な事例を検索できる事例ベースの検索部を開発する。

成果の内容・特徴

  • 事例中の語の出現頻度をもとに事例と語の概念ベクトルを計算して、そのベクトルの内積を類似度と定義する(Latent Semantic Indexing法)。これを使って事例ベースの中から問い合わせに類似した事例を検索するシステムを開発した(図1)。
  • このシステムは次のように動作する。利用者はブラウザーから自然言語体で問い合わせを入力する(図2)。その問い合わせはWebサーバを経由して概念検索サーバに送られる。そこで問い合わせと事例間の類似度が計算され、その類似度が大きい順に並び換えられて検索結果が返される。検索結果の例を図3に示した。タイトルをクリックすると対応する事例が表示される。
  • 利用者は自然言語文を入力することが出来るので自分の検索意図を表現し易くなった。さらに、検索結果からその意図によく関連する事例を選び、その事例自身を問い合わせ文とすることが可能になり、再検索による絞り込みが容易になった。すなわち利用者にとってより簡便に自分が欲しい事例を検索することが出来るようになった。
  • またこのシステムは、概念ベクトルを利用しているため問い合わせた語が事例の中に含まれない場合でも、その事例が問い合わせ語と関連を持つものであれば検索されることが特徴である。これはシステムの適合率を向上させた。システム評価の結果を図4に示したが、全文検索システムとの性能比較において適合率が約20パーセント向上した。

成果の活用面・留意点

  • 本システムは次のアドレスで公開されている。 http://agrinfo.narc.affrc.go.jp/
  • 事例ベースの問題解決能力を増大させるため、公開できる事例を幅広く収集する必要がある。

具体的データ

図1:事例ベースプロトタイプシステムの構成図
図1:事例ベースプロトタイプシステムの構成図

 

図2:検索インターフェース
図2:検索インターフェース

 

図3:検索結果の例
問い合わせ「転作大豆が作りたい」の結果
図3:検索結果の例 問い合わせ「転作大豆が作りたい」の結果

 

図4:検索評価の結果
適合率は正確さの、再現率はもれなく検索されているかの指標
図4:検索評価の結果 適合率は正確さの、再現率はもれなく検索されているかの指標

 

具体的データ

その他

  • 研究課題名:データマイニング手法を用いた農業情報の解析
  • 予算区分 :経常
  • 研究機関:平成10年度(平成9年~13年)