直播適性を持つ極良食味・耐倒伏・難穂発芽の水稲新品種候補系統「北陸179号」

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

「北陸179号」は寒冷地南部では晩生の早に属する粳種で、草型はやや短稈の中間型、耐倒伏性が強く、穂発芽性が難の極良食味系統で、直播栽培にも適する。平成12年から熊本県では「ミネアサヒ」等に替えて普及を予定している。

  • 担当:北陸農業試験場・地域基盤研究部・稲育種研究室
  • 連絡先:0255-26-3239
  • 部会名:作物生産
  • 専門:育種
  • 対象:稲類
  • 分類:普及

背景・ねらい

北陸地域を中心とする寒冷地南部地帯では「コシヒカリ」を主体とする良食味品種の作付が行われているが、倒伏や長期にわたる秋雨による穂発芽の発生等が減収、品質・食味の低下の要因となっており、これらの特性の改良が求められている。また、近年の米を巡る情勢から、低コスト・省力化をめざした直播栽培に適する品種、他産地と差別化できる特色のある品種への要望も強い。そこで、直播栽培に適し、複数の抵抗性・耐性を持つ極良食味品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「北陸179号」は平成元年に北陸農業試験場において、耐倒伏、穂発芽性等複数の抵抗性・耐性を持つ極良食味品種の育成を目的として収4885(後の「どんとこい」)を母とし、収4695を父として交配した後代から育成された系統である(表1)。
  • 出穂期および成熟期は「日本晴」よりやや早く、「アキニシキ」並で、育成地では晩生の早に属する粳種である(表1)。
  • 「日本晴」に比べ稈長はやや短く、穂長はやや短く、穂数はやや少なく、草型は中間型である。耐倒伏性は強で、収量性は「日本晴」に優る多収である(表1)。
  • いもち病抵抗性遺伝子型はPiiと推定され、葉いもち圃場抵抗性はやや強、穂いもち圃場抵抗性は中、白葉枯病圃場抵抗性は中、穂発芽性は難である(表1)。
  • 玄米は「日本晴」よりやや大きく、品質は「日本晴」よりやや劣り上下、食味は「日本晴」に優り、「コシヒカリ」並の上中である(表1)。
  • 直播栽培において「どんとこい」並に苗立ちが良好で、倒伏が少なく、「どんとこい」並の収量が得られる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 「北陸179号」の特性から、「日本晴」、「アキニシキ」等の熟期の作付けが可能な北陸、東北南部、関東以西の広い地域に適応する。
  • 熊本県では平成12年より高冷地帯の「ミネアサヒ」等に替えて普及を予定している。
  • 適正施肥、いもち病の適期防除に努めるとともに、白葉枯病常発地帯での作付は避ける。

具体的データ

表1.特性一覧

 

表2.直播栽培(湛水表面散播)における北陸179号の生育、収量および品質

 

その他

  • 研究課題名:
    寒冷地中南部向早中生水稲品種の育成及び選抜法の開発 寒冷地南部向き安定良質、良食味、直播など機械化適性品種の育成
  • 予算区分:経常・次世代稲作
  • 研究期間:平成11年度(平成元~11年)
  • 発表論文等:なし