被覆尿素からの経時的な窒素溶出についての簡便・高精度な推定法
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
被覆尿素からの経時的な窒素溶出は、リチャーズ式から誘導した式を使うと高い精度で推定できる。また、各種の被覆尿素からの経時的な溶出特性は2つの特性値で表すことができる。
- 担当:北陸農業試験場・水田利用部・土壌管理研究室
- 連絡先:0255-26-3244
- 部会名:生産環境
- 専門:肥料
- 分類:指導
背景・ねらい
水稲栽培の省力化や環境への負荷軽減などの目的で、被覆尿素は様々な地域の栽培様式に導入されている。特に初期溶出が抑制された被覆尿素(LPS系、LPSS系)は穂肥を省略できるのでその効果が期待されるが、高い精度で経時的な窒素溶出を推定できる式がなかった。そこで、従来法で用いられてきた式に比べて、より簡便かつ高精度で推定できる式を開発する。
成果の内容・特徴
- 定温条件における被覆尿素からの経時的溶出は、リチャーズ式から誘導した次の式を使うことで、実態にあった溶出曲線を描くことができる。この式は、最大溶出量N、溶出曲線の形を示すd、速度定数k、という従来法と同数の3つの特性値を持つ(図1)。(1) リチャーズ式から誘導した式(時間tの溶出量n) n=N・[1+d・exp{exp(d+1)-1-k・t}]-1/d
- 見かけの活性化エネルギー(Ea)は被覆尿素の種類に関係なく一定とできるので(図2)、アレニウス式を使うと標準温度(25°C)の速度定数(ks)から任意温度の速度定数(k)が求められる。すなわち、温度が変わっても3つの特性値(N, d, ks)で窒素溶出を表現できる(図3)。(2) アレニウス式から誘導した式 Ink=Inks-(EaIR)・{1/T-1/(273+25)} T:温度(K)
- 最大溶出量Nを肥料の成分量とすることができるので、各被覆尿素の溶出特性を溶出曲線の形を示す(d)と標準温度の速度定数(ks)という2つの特性値で表現できる(図4)。
- 従来法の一次反応式をリチャーズ式から誘導した式(1)に替えるだけで、簡便かつ高精度での溶出量の推定が可能となるので、最適な被覆尿素の配合を設計する際に利用できる。
成果の活用面・留意点
- 特性値の算出および経時的溶出の推定は、汎用表計算ソフト(ex. Excel)で簡単に行える。
- 従来法の一次反応式と同様に、温度に依存する変数はkだけなので、標準温度変換日数(金野・杉原 1986)を用いることで、変温条件での適用が可能である。
- 供試した被覆尿素で一定となったEaと、各被覆尿素の溶出特性を表す2つの特性値(d, ks)を用いて、大凡の肥料特性を把握できるので、肥料の改良や開発において利用できる。
- リチャーズ式から誘導した式(1)は、原点から始まる度数分布曲線を3つの係数で記述できるので(図1)、土壌窒素無機化等の経時的状態変化を表す場面での利用が期待される。
具体的データ


その他
- 研究課題名:水稲の苗立ち能力に影響を与える種子の栄養要因の解明
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成11年度(平成10~14年)
- 発表論文等:1.平成12年に日本土壌肥料学会で発表予定 2.Soil science and Plant nutrition に投稿中