そらまめの雪害発生には病原菌が関与する

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

そらまめの雪害発生には、積雪下で雪腐症状を引き起こす褐色雪腐病菌(Pythium iwayamai) および雪腐菌核病菌(Sclerotinia trifoliorum) が関与している。

  • 担当:北陸農業試験場・水田利用部・病害研究室
  • 連絡先:0255-26-3242
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物病害
  • 対象:果菜類
  • 分類:指導

背景・ねらい

北陸地域における水田転換作物としてそらまめの導入が進められているが、雪害の発生が大きな生産阻害要因となっており、その発生機構の解明が求められている。これまでそらまめの生理生態的な要因からの研究が進められてきたが、圃場試験の結果から植物病原菌の関与が示唆されたので、病原を明らかにし防除対策の参考とする。

成果の内容・特徴

  • そらまめの露地栽培圃場において融雪直後に被害株を観察すると、葉身に黒色水浸状の不定形の斑紋が認められる。積雪期間が長い場合には茎葉が黒褐色~灰褐色の雪腐症状を呈し、表面に菌糸塊が観察される場合がある(図1a)。
  • 黒色水浸状部位からは、おもにPythium属菌が分離される。培地上での生育適温は20°C前後であるが、1°Cでの生育も比較的良好である。分離菌は蔵卵器や遊走子のうの形態および培養性状からPythium iwayamai Itoである(表1、図1d)。
  • 灰褐色を呈し菌糸塊が認められる部位からは、おもにSclerotinia属菌が分離される。培地上に黒色不定形の菌核を形成し、生育適温は20°C前後、1°Cでも生育が認められるが、30°Cではほとんど生育できない。発病そらまめ上に形成される菌核から、収穫年の秋もしくは翌年秋に淡褐色の子のう盤を生ずる。これら培養性状および形態から分離菌はSclerotinia trifoliorum Erikssonである(表2、図1b、c)。
  • 両分離菌をそらまめの切り葉に菌叢接種すると、1°Cおよび20°Cのいずれの温度条件でも病原性が確認される。また、麦類雪腐病菌接種法に準じてそらまめ苗に接種し、0.5°C、暗黒・湿潤条件下に10日間保つと雪腐症状が再現されることから、そらまめの雪害発生には植物病原菌の関与が明らかである。

成果の活用面・留意点

  • 雪害の一つの要因として病原菌が同定されたことにより耕種的対策がとれるなど、雪害防止対策の参考となる。
  • 両病害は圃場内において混合発生しており、圃場の来歴や周辺環境によって発生割合は異なる。

具体的データ

図1.a:そらまめの雪腐症状、b:Sclerotinia属菌の子のう盤、c:子のう、d:Pythium属菌の蔵卵器

 

表1.そらまめ分離Pythium属菌の形態 表2.そらまめ分離Sclerotinia属菌の形態

 

その他

  • 研究課題名:酸性融雪水が越冬作物の雪害発生機構に及ぼす影響
  • 予算区分:経常、科・重点基礎
  • 研究期間:平成10年~11年度
  • 発表論文等:
    ソラマメに発生した雪腐菌核病(新称)と褐色雪腐病(新称)について.日植病報 65(6):656(講要)、1999.