移植直後の除草剤によるロングマット水稲苗の薬害特性

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要約

現状では、根が露出、根量が多い、移植時の損傷が多い、とされるロングマット水稲苗では移植7日後には除草剤の影響は小さいが、移植直後に処理すると、同じ葉齢の慣行稚苗より薬害による乾物重対無処理区比の減少が大きい。移植後の露出根は除草剤の薬害による乾物重対無処理区比の減少を助長することがある が、移植時の根の損傷はそれを助長しない。

  • 担当:農業研究センター・耕地利用部・水田雑草研究室
  • 連絡先:0298-38-8953
  • 部会名:作物生産
  • 専門:雑草
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

ロングマット水稲苗の特性のうち現状では、(1)根が露出していること、(2)根量の多いこと、(3)葉齢が進む割に乾物重が少ないこと、(4)移植時の 損傷の多いこと、などが除草剤の影響に関係する。ロングマット苗移植栽培で、移植直後の除草剤の処理は一層の省力化につながるが、慣行の稚苗より除草剤の 影響を強く受けることが懸念される。このため、移植直後の除草剤処理の影響を慣行稚苗との対比や植付精度などの視点で解析し、ロングマット苗移植栽培の体 系化の試験研究に資する。

成果の内容・特徴

1~2.5の範囲で葉齢を揃えた条件で検討した結果、ロングマット苗に対する除草剤施用は苗の活着後は慣行稚苗のそれに準じて行えるが、移植直後の施用にあたっては、植付精度に応じてイネに対する安全性の高い剤の選択に留意する必要がある。

  • 一発処理除草剤によるロングマット苗の乾物重対無処理区比の減少は植付深度 0cmで顕著であるが、その程度は処理時期の遅れに伴って小さくなる(図1)。数種の初期除草剤や一発処理除草剤を植付深度 0cmでロングマット苗の移植当日に処理すると、同葉齢の慣行稚苗より乾物重対無処理区比の減少が大きい(図2)。
  • 植付深度1cmでの移植当日処理では、露出根数が1本から全部に増加しても乾物重対無処理区比が低下しない剤もあるが、移植当日処理に適さないような剤では露出根数の増加に伴って乾物重対無処理区が低下する(図3)。苗が活着して新根の伸長した移植5日後での処理では、露出根数の増加がイネの乾物重対無処理区の低下を助長することはない。
  • 根の機械的損傷を想定した無剪根・半剪根・全剪根の苗では、植付深度 0cmでの移植当日と移植5日後の処理時期とも剪根程度の大きい苗ほど乾物重対無処理区の低下が小さい(図4)。

成果の活用面・留意点

  • ロングマット苗栽培体系の確立における試験研究などでの除草体系策定の参考資料として活用できる。
  • 本成果は減水深のない、沖積埴壌土のポット試験で得られた結果であることに留意する。
  • イネに対する除草剤の影響の程度は剤の種類によって異なるので、本成果で使用した剤との対比で判断する。

具体的データ

図1:数種一発処理剤の処理時期によるロングマット苗の育成への影響(植付深度0cm、移植39日後の調査)
図1:数種一発処理剤の処理時期によるロングマット苗の育成への影響(植付深度0cm、移植39日後の調査)

 

図2:数種除草剤の移植当日処理によるロングマット苗と慣行稚苗の生育への影響の差異(移植34日後の調査)
図2:数種除草剤の移植当日処理によるロングマット苗と慣行稚苗の生育への影響の差異(移植34日後の調査)

 

図3:露出根数を異にするロングマット苗の生育に対する数種一発処理剤の影響(移植35日後の調査)
図3:露出根数を異にするロングマット苗の生育に対する数種一発処理剤の影響(移植35日後の調査)

 

図4:剪根程度を異にするロングマット苗の生育に対する移植当日の数種一発処理剤の影響(移植35日後の調査)
図4:剪根程度を異にするロングマット苗の生育に対する移植当日の数種一発処理剤の影響(移植35日後の調査)

 

図5:除草剤の種類と略号(各図共通)
図5:除草剤の種類と略号(各図共通)

 

その他

  • 研究課題名 :ロングマット苗移植栽培技術の体系化・雑草競合力の優れた水稲品種による雑草制御技術
  • 予算区分 :実用化促進(地域総合)・経常
  • 試験期間 :平成11年度(平成10年~12年・平成8年~10年)