一年生雑草コナギに対する水稲の光競合力の評価法

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要約

水稲群落内でのコナギの乾物重は、移植後約22~63日の平均相対光量子量と有意な相関関係があり、相対光量子量を平均する期間は7日程度(移植後 29~35日)まで短縮できる。また、水稲は、コナギの移植64日後の乾物重が20g/m2以上になると減収する。このことから、移植後29~35日の間の 平均相対光量子量を30%以下とすれば雑草害を回避でき、簡便にコナギに対する水稲の光競合力を評価できる。

  • 担当:農業研究センター・耕地利用部・水田雑草研究室
  • 連絡先:0298-38-8953
  • 部会名:作物生産
  • 専門:雑草
  • 対象:雑草類,稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

水稲と雑草との競合関係については、雑草の草種と水稲の生育・収量の関係を中心に解析が進められてきた。しかし、雑草を抑制する面からの水稲の競合力の機 構については、あまり知られていない。除草剤に依存しない環境保全型雑草制御の観点から一年生雑草コナギを材料として水稲との競合のメカニズムを解明し、 雑草競合力を評価・検定する方法を確立することによって、雑草競合力の優れた水稲品種の育成や雑草競合力を活用した栽培管理法のための基礎資料を得る。

成果の内容・特徴

16品種の草型を異にする日本型およびインド型の水稲品種とコナギの生育を圃場試験によって解析した結果、以下の点を明らかにした。

  • 水稲群落内での移植64日後のコナギの乾物重は、年次および移植時期を通して、移植後約22日から63日の間の地上部20cmの平均相対光量子量と有意な一次の回帰式で表される。有意な回帰式を与える相対光量子量を平均する期間は7日程度まで短縮できる(表1,図1)。
  • 日本型水稲は、移植64日後におけるコナギの乾物重が20g/m2を越えると穂数が低下する(図2)。
  • 水稲群落内地上20cmの相対光量子量は、品種,年次,移植時期を通して、地上20cm以上のLAIの増加にともなって指数関数的に減少する(図3)。
  • 生育期間を通して水稲よりも草丈が低いコナギでは、光環境を制御することが防除に有効で、移植後約29日から35日の間の平均相対光量子量を30%以下と すれば水稲への雑草害が回避できる可能性がある。水稲群落内の移植後約1ヶ月の時期を中心とする7日間の平均相対光量子量を測定することで簡便にコナギに 対する光競合力を評価できる。コナギが大量発生する圃場では、雑草害によって草型が変化し、競合力が劣ることがあるので留意する。
  • 小型光量子センサーを用いて畦間の光量子量を10時から14時まで毎時測定した。

具体的データ

図1:平均相対光量子量とコナギの乾物重(移植後約2ヶ月)との関係
図1:平均相対光量子量とコナギの乾物重(移植後約2ヶ月)との関係

図2:コナギとの競合による水稲[日本型品種]の雑草害
図2:コナギとの競合による水稲[日本型品種]の雑草害

 

図3:水稲のLAIと群落内の光環境
図3:水稲のLAIと群落内の光環境

 

表1:異なる測定期間の平均相対光量子量とコナギの乾物重との寄与率の変化
表1:異なる測定期間の平均相対光量子量とコナギの乾物重との寄与率の変化

 

その他

  • 研究課題名:雑草競合力の優れた水稲品種による雑草制御技術
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成11年度(平7~11年)