油圧式土壌サンプリング装置
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要約
トラクタの油圧装置を利用して、合成樹脂製の採土円筒を地中に挿入し、円筒内に填入された土壌を採取する装置である。従来の人力方式に比べ作業負担が少なく、作業能率も3倍以上なので、これまでより詳細な地力マップの作成が可能になる。
- 担当:北陸農業試験場・総合研究部・総合研究第1チーム
- 連絡先:0255-26-3218
- 部会名:営農・作業技術
- 専門:機械
- 対象:農業機械
- 分類:普及
背景・ねらい
作物の生育の不均一性(ムラ)を解消するためには、圃場内土壌の養分等のムラを把握することが前提となる。海外において、土壌サンプリング装置の実用化例は幾つかあるが、採土機構が複雑であったり、土壌物理性等他の測定機能を併せ持つ大掛かりな装置が多い。そこで、農家レベルでも操作が可能な、簡易な土壌サンプリング装置を開発し、局所栽培管理の要素技術として活用を図る。
成果の内容・特徴
- 本装置は、トラクタの3点リンクに鉛直下向きに固定された油圧シリンダと、そのピストンロッド先端に取り付けられる採土円筒からなり(図1)、採土円筒を地中に所定の位置まで挿入した後引き抜き、円筒内に填入した土壌を採取する(図2)。
- 開発した採土円筒は弾性のある合成樹脂製である。円筒の縦方向に切れ目があり(図1)、付属の開溝具を用いて切れ目を押し開くことにより、円筒から土壌を容易に取り出すことができる。また、円筒は透明なので、採土長を外から測定できる(図3)。
- 本装置による作業は2名1組で行う。採土円筒の着脱は、ピンの抜入方式なので容易である。また、採取土壌は採土円筒ごと保存できる。従って、採土円筒を多数用意し、土中から引き抜いた後は、試料を現場で取り出さず、直ちに新たな採土円筒を装着して次の採取を行う効率的な作業が可能である。採取の所要時間は、10m程度の移動時間も含め1点当たり2分以下であり、従来の人力方式の1/3以下である(表1)。
- 図4は、本装置で採取した土壌を分析して作成した全窒素含量マップである。本装置は土壌を鉛直方向に採取するので、深度別、土層別に分析することにより、土壌養分の空間分布を把握することができる。本装置の最大採取深度は35cmであり、大半の水田において下層土まで到達する。
成果の活用面・留意点
- 地力マップ作成の目的で今後の利用拡大が見込まれる。
- 石礫の多い圃場では挿入困難である。砂質土壌では採取土壌が脱落する場合がある。
- 挿入時に土壌の圧縮が起きることがあるが、採土円筒を所定の深さまで挿入しているので、外部から採土長を測定すれば、圧縮量を知ることができる(圧縮量=挿入深-採土長)。
具体的データ





その他
- 研究課題名:生育情報収集処理技術を活用した低投入型高品質稲作営農システムの確立
- 予算区分:実用化促進(地域総合)
- 研究期間:平成11年度(平成10~14年)
- 発表論文等:
大区画圃場における水稲の局所管理, 農機誌, 61(4), 14-19,1999.7 特許出願中(特願平11-027036)