散播水稲の苗立数計測システム

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要約

カメラとGPSを搭載したトラクタにより散播水稲の苗を移動撮影してマップ化し、室内において、得られた各画像上の苗立数を自動計測するシステムである。カメラの検出領域は遮光板(移動暗室)で覆われているので、外乱光の影響を受けず、良質の画像を撮ることができる。

  • 担当:北陸農業試験場・ 総合研究部・総合研究第1チーム
  • 連絡先:0255-26-3218
  • 部会名:営農・作業技術
  • 専門:機械
  • 対象:農業機械
  • 分類:研究

背景・ねらい

苗立ムラの検出は、直播き水稲の局所栽培管理を展開するための重要な要素である。しかし、苗立数計測の自動化はこれまで行われておらず、多点計測を要する大区画水田においては調査に支障を来している。空撮による計測は効率的であるが、外乱の多い水面上において自動解析に供し得る良質の画像を撮ることは困難である。そこで、外乱の影響を受けない地上ベースの苗立数計測システムを開発し、局所栽培管理の基盤技術として活用する。

成果の内容・特徴

  • 本システムは、散播水稲の苗を移動撮影(図1)してマップ化し、画像解析により苗立数を計測するシステムである。画像及びGPSからの位置情報の入出力制御、並びに画像のマップ化は、別に開発した画像マッピングシステム(平成11年度成果情報候補)を用いる。
  • カメラの検出領域は遮光板(移動暗室)で覆われている(図1)。撮影位置において、移動暗室が地表に降ろされると外部からの光は遮断される。暗室内には二方向から人工光が照射され、比較的照度ムラの少ない中央部の60cm四方のみを苗立数計測の対象とする(図2)。
  • 撮影終了後、画像情報データベースが作成され、同時に、位置情報に基づきマップ化される(図3-A)。マップ上の任意の画像をクリックすると、図3-Bのように原画像が拡大表示され、目視による苗立数の計測や生育状況の観察が行なえる。原画像はさらに画像解析され苗立数が計測される(図3-C)。原画像はほぼ一定の光環境下で撮影されるので、画像解析において画像ごとにパラメータを変更する必要はなく、全画像を一括して自動計測できる。
  • 図3の圃場において、本システムによる計測値と原画像を目視計測した結果との相関係数は0.95である。誤差の原因は、苗の水没の程度、水の濁り、苗の密集部の有無、葉齢のばらつき、浮き苗の多少、雑草の有無等による。しかし、現実的な局所管理を想定して計測値を4段階に階層分けしてマップ化すると、目視調査による階層と概ね一致し、実用上の問題は少ない(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 生育予測、追肥による生育制御、除草剤散布量の調整等に活用できる。
  • 検出対象とする苗は、概ね3葉期前半から4葉期前半までである。播種方式が散播以外の場合は、苗立数計測のアルゴリズムを変更する必要がある。

具体的データ

図1. 図2.

 

図3.

 

図4.

その他

  • 研究課題名:生育情報収集処理技術を活用した低投入型高品質稲作営農システムの確立
  • 予算区分:実用化促進(地域総合)
  • 研究期間:平成11年度(平成10~14年)
  • 発表論文等:平成12年度農業機械学会で発表予定