モチ性小麦突然変異系統(K107Wx1およびK107Wx2)の製粉特性および小麦粉糊化特性の形成要因

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要約

モチ性小麦突然変異系統(K107Wx1およびK107Wx2)は,原系統(関東107号)に比べ,胚乳の澱粉含量が低く,脂質含量およびβ-グル カン含量が高いため,製粉歩留が低い。モチ性系統は,原系統に比べ,アミロース含量が著しく低いため,小麦粉糊化特性の特徴として粘度急増温度および糊化 ピーク温度が低い。

  • 担当:農業研究センター・作物生理品質部・流通利用研究室
  • 連絡先:0298-38-8868
  • 部会名:作物生産
  • 専門:食品品質
  • 対象:麦類
  • 分類:研究

背景・ねらい

モチ性小麦系統(K107Wx1およびK107Wx2)は,関東107号に由来する突然変異系統であり,遺伝的な背景は関東107号と大きくは異な らないと推定されるため,胚乳澱粉がウルチ性からモチ性へ変化することに伴う小麦の品質特性の変化を解析するための良い材料である。そこで,同一条件で栽 培したモチ性系統と関東107号の化学成分組成,製粉歩留ならびに小麦粉の糊化時の温度特性および粘度特性を比較することにより,小麦の製粉特性および小 麦粉糊化特性の形成要因を解明する。

成果の内容・特徴

  • モチ性小麦系統は,原系統に比べ,胚乳の澱粉含量が有意に低く,脂質含量および(-グルカン含量は有意に高い(表1)。モチ性系統で認められた化学成分組成の特徴は,他のモチ性作物でも認められるものと一致している。一方,蛋白質含量および主要な蛋白質組成は同等である。
  • クァドルマット・ジュニア・ミル(Brabender)を用いて,フィード速度40-80 g/分の範囲で製粉した場合,モチ性小麦系統の製粉歩留は平均40.4%であり,原系統の49.4%に比べ有意に低い。この違いには,澱粉含量が低いこ と,脂質含量が高く,粉の流動性が低下していること,および細胞壁が肥厚していることが関与していると推定できる。モチ性系統と原系統の小麦粉(QJ粉) の平均粒径は同等である(表1)ため,穀粒の硬軟質性は製粉歩留の違いに関与していない。
  • ラピッド・ビスコ・アナライザー(RVA)を用いて測定した小麦粉糊化特性に関しては,モチ性小麦系統の粘度急増温度および糊化ピーク温度は,原系統に比べ,有意に低い(表2)。この原因はアミロース含量の違いによると推定できる。一方,糊化温度は同等であるので,糊化温度には澱粉粒あるいはアミロペクチンの特性が関与していると推定できる。
  • 供試した小麦粉中のα-アミラーゼ活性はモチ性系統で有意に低かったが,ピーク粘度,ブレークダウン等の粘度特性に与える影響はモチ性系統で有意に大きかった(表2)。これは,モチ性系統の澱粉が,原系統に比べ,低温で膨潤・崩壊しやすいために,α-アミラーゼ活性の影響を受けやすいことに起因すると推定できる。

成果の活用面・留意点

モチ性系統の製粉歩留を向上させるためには,脂質含量が低く,細胞壁が肥厚しない系統を作出する必要がある。粘度急増温度は加温測定中の20秒間に粘度が4RVU増加する温度と定義した。

具体的データ

表1.モチ性突然変異系統および関東107号の澱粉,蛋白質,脂質およびβ-グルカン含量ならびに平均粒径
表1.モチ性突然変異系統および関東107号の澱粉,蛋白質,脂質およびβ-グルカン含量ならびに平均粒径

 

表2.モチ性突然変異系統および関東107号の小麦粉糊化特性およびα-アミラーゼ活性
表2.モチ性突然変異系統および関東107号の小麦粉糊化特性およびα-アミラーゼ活性

 

その他

  • 研究課題名:モチ性突然変異系統を利用した小麦の品質特性形成要因の解明
  • 予算区分 :重点基礎・経常
  • 研究期間 :平成 10 年度