イネいもち病菌レース判別用矮性系統の育成と利用
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要約
レース判別に使われている9判別品種と参考品種BL1の真性抵抗性遺伝子を導入した矮性の10系統を育成した。この系統を利用して、小規模施設でレースの簡易検定ができる方法を考案した。
- 担当:農業研究センター・病害虫防除部・水田病害研究室
- 連絡先:0298-38-8940
- 部会名:生産環境
- 専門:作物病害
- 対象:稲類
- 分類:指導
背景・ねらい
いもち病菌のレース判別はYamada et
al.(1976)の9判別品種とこれに参考品種を加えて行われている。これらの品種は冬期には徒長するため、病原菌の接種とレース判別に支障をきたすこ
とが多い。また、病原菌の分離から接種、判別に至るまで多くの作業と機器を要する。現在、本病防除のために同質遺伝子系統を利用した混植栽培が行われてお
り、いもち病発生圃場から採取した多数の病斑のレースを短期間に、簡易に判別できる方法の開発が望まれている。そこで特別の機器を要しない検定方法を開発する。
成果の内容・特徴
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レース判別用矮性系統は近畿33号(新2号型)から得た矮性イネに9判別品種(新2号、愛知旭、石狩白毛、関東51号、ツユアケ、フクニシキ、ヤシロモ
チ、Pi
No.4、とりで1号)及び参考品種のBL1をそれぞれ交配し、後代から圃場抵抗性が弱く、各品種が持つ真性抵抗性遺伝子を導入した系統を選抜したもので
ある。
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矮性系統にはそれぞれが持つ真性抵抗性遺伝子から、矮性+系統、同a系統、同i系統、同k系統、同km系統、同z系統、同ta系統、同ta2系統、同zt系統及び矮性b系統と名付ける。
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矮性系統は冬期の温室内で育苗しても徒長せず(表1)、小面積で多数の育苗ができる(図1)。
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外観健全もみに形成された少量の胞子を用いてもレースの簡易検定ができる。胞子の多量形成が可能な葉いもち、穂くびいもち病斑を用いる場合には、矮性系統に直接接種ができる(図2)。
成果の活用面・留意点
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どこでも、誰でも、いつでも、特別な機器を使わず、小規模な施設で簡単にレース検定ができるので普及現場で活用できる。
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病斑型、病斑伸展は判別品種と差がないので、罹病性反応を示した系統は調査時期が遅れると枯死することがあるので、調査時期を失しないようにする。
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施肥量が多いと枯れることがあるので、判別品種の約半量にする。
具体的データ

表1:矮性系統と判別品種の第4葉までの草丈

図1:愛知旭と矮性a系統

図2:矮性系統を利用したいもち病菌レースの簡易検定法
その他
- 研究課題名:いもち病菌レースの変動・予測技術の開発
- 予算区分 :作物対応研究「次世代稲作」
- 研究期間 :平成11年度(平成10~12年)