ファイトプラズマ感染によって植物組織に蓄積するタンパク質の特性

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要約

タマネギ萎黄病ファイトプラズマに感染したシュンギクの可溶性タンパク質には、感染特異的タンパク質(pathogenesis-related protein)の5群に属するタンパク質が多量に蓄積されている。

  • 担当:農業研究センター・病害虫防除部・マイコプラズマ病害研究室
  • 連絡先:0298-38-8930
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物病害
  • 対象:微生物
  • 分類:研究

背景・ねらい

農薬使用に頼らない新たなファイトプラズマ病制御技術を開発するためには、宿主植物への感染及び病徴発現メカニズムの解明が重要である。既にウイル スや糸状菌等では、病原-宿主植物間の分子レベルでの相互認識等により感染成立や病徴発現が決定されている例も知られているが、ファイトプラズマと宿主植 物との相互作用に関する知見は非常に少ない。ファイトプラズマー宿主植物間の相互作用の一端を明らかにするために、ファイトプラズマ感染による宿主植物の タンパク質発現への影響について試験を行った。

成果の内容・特徴

  • ヒメフタテンヨコバイ媒介性のタマネギ萎黄病ファイトプラズマに感染したシュンギク組織から可溶性タンパク質を抽出し二次元電気泳動法で解析したところ、 病徴が明瞭に現れている接種後45日目の試料では、茎頂部にのみ軽微な病徴を示している接種後30日目の試料や、健全虫を接種した対照試料には存在しない 数種のタンパク質が特異的に蓄積していることが明らかになった(図1)。また、これらのタンパク質の蓄積は、感染植物の葉、茎、腋芽のいずれにおいても同様に観察された。
  • 感染シュンギクに特異的に蓄積している6種のタンパク質についてN末端アミノ酸配列を決定し、データーベース上の既知タンパク質との相同性解析を行ったと ころ、これら全てのタンパク質は感染特異的(pathogenesis-related, PR)タンパク質の5群に属するタンパク質であることが明らかになった(図2)。
  • これらのPR-5群タンパク質の蓄積は、タマネギ萎黄病ファイトプラズマと種レベルで異なる他の病原ファイトプラズマが感染したシュンギクにおいても同様に認められた。

成果の活用面・留意点

ファイトプラズマ感染に対する宿主植物の応答反応の一つであるPR-5群タンパク質の発現・蓄積を指標として用いることで、初期感染から全身的な病徴発現までの、ファイトプラズマー宿主植物間の相互作用についてタンパク質レベルで解析することが可能になる。

具体的データ

図1.OY感染シュンギクに特異的に蓄積する6種のタンパク質★(右下:接種45日後)シュンギクソウマチン様タンパク質 CTLP (Chrysanthemum coronarium thaumatin-like protein) 1-6
図1.OY感染シュンギクに特異的に蓄積する6種のタンパク質★(右下:接種45日後)シュンギクソウマチン様タンパク質 CTLP (Chrysanthemum coronarium thaumatin-like protein) 1-6

 

図2.OY感染シュンギクに特異的に蓄積するタンパク質(CTLP)と既知のPR-5タンパク質とのN末端アミノ酸配列の比較CTLP1-4:図1の1-4(N末端アミノ酸配列は同一)CTLP5:
図2.OY感染シュンギクに特異的に蓄積するタンパク質(CTLP)と既知のPR-5タンパク質とのN末端アミノ酸配列の比較CTLP1-4:図1の1-4(N末端アミノ酸配列は同一)CTLP5:

 

図1の5, CTLP6:
図1の5, CTLP6:

 

図1の6 TLP(ソウマチン様タンハ°ク),OLP(オスモチン様タンハ°ク),PRSはPR-5に属する
図1の6 TLP(ソウマチン様タンハ°ク),OLP(オスモチン様タンハ°ク),PRSはPR-5に属する

 

その他

  • 研究課題名:ファイトプラズマー植物間相互作用の解明
  • 予算区分 :経常・新技術
  • 研究期間 :平成11年度(平成11年~15年)