VA菌根菌とパスツーリア菌の併用はネコブセンチュウ害を相乗的に抑制する
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要約
VA菌根菌を接種し定着させたトマト苗をパスツーリア菌を混和したサツマイモネコブセンチュウ汚染土に定植すると、根部の被害や線虫密度がVA菌根菌またはパスツーリア菌の単独処理の場合より減少し、トマトの生育も良好となる。
- 担当:農業研究センター・病害虫防除部・線虫害研究室
- 連絡先:0298-38-8839
- 部会名:生産環境
- 専門:虫害
- 対象:トマト
- 分類:研究
背景・ねらい
VA菌根菌には植物に対する成長促進効果のほか、病原生物を根絶する作用はないものの、ネコブセンチュウやフザリウム菌の抑制効果が知られている。
一方、ネコブセンチュウの生物防除資材である天敵細菌パスツーリアは、作物のネコブセンチュウ害の半恒久的な抑制効果が実証されているものの、即効性はな
く、施用初年の作物の線虫害を抑制できない。そこで、施用初年の線虫害軽減を目的に、VA菌根菌によるパスツーリア菌の補完効果をポット試験により検討す
る。
成果の内容・特徴
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VA菌根菌(Glomus sp.R10 ATCC-74311、出光興産)またはパスツーリア菌(Pasteuria penetrans,
パストリア水和剤、ネマテック)を単独処理したネコブセンチュウ汚染土壌のトマトの生草重は無処理(ネコブセンチュウ単独)と異ならないが、両者を同時に
処理すると無処理のトマトに比べ生草重が52%増加し、生育抑制の軽減に共力作用が認められる(図1)。
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ネコブセンチュウの加害によるトマトの根の根こぶ形成は、VA菌根菌またはパスツーリア菌の単独処理ではまったく抑制されない。しかし、両者を同時に処理
したトマトの根こぶ着生度(10段階調査法)は、無処理(ネコブセンチュウ単独)の場合より32%小さくなり、根の被害軽減に共力作用が認められる(図2)。
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トマト苗移植後第10週の土壌20g当たりのネコブセンチュウ第2期幼虫数はVA菌根菌またはパスツーリア菌の単独処理により抑制されるが、抑制率は同程
度(約40%減)である。しかし、VA菌根菌とパスツーリア菌を同時に処理したトマトでは、無処理(ネコブセンチュウ単独)のトマトに比べ第2期幼虫数が
約60%減少し、第2期幼虫数の抑制に共力作用が認められる(図3)。VA菌根菌はパスツーリア菌の増殖を妨げない(図4)。
成果の活用面・留意点
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VA菌根菌とパスツーリア菌を併用すると、トマトがパスツーリア菌導入当初に受けるネコブセンチュウの被害が軽減され、生物防除法普及促進に有用なデータとなる。
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本試験で用いたVA菌根菌は高リン酸条件でも植物生育を抑制しない土着系統である。
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結果はポット試験のデータであるため、圃場試験による増収効果の実証が必要である。
具体的データ

図1:パスツーリア菌とVA菌根菌の接種がネコブセンチュウ感染トマトの生草重に及ぼす影響(6反復、Gm:VA菌根菌、Mi:ネコブセンチュウ、Pp:パスツーリア、同じ添え字はTukey(P=0.05)の検定で有意差なし)

図2:パスツーリア菌とVA菌根菌の接種がトマトのネコブセンチュウの根こぶ形成に及ぼす影響(6反復)

図3:パスツーリア菌とVA菌根菌の接種がトマトのネコブセンチュウ幼虫密度に及ぼす影響(6反復)

図4:VA菌根菌がパスツーリア菌の寄生活動に及ぼす影響(6反復、区間に有意差はない)
その他
- 研究課題名:パスツーリア菌、メチオニン、菌根菌等の体系利用によるネコブセンチュウと土壌病害の総合防除技術の確立
- 予算区分 :総合的開発(IPM)
- 研究期間 :平成11年度(平成11~13年)