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土壌浸透水が粗大孔隙等を通過する際に生じるプレファレンシャルフローは、仮想混合槽の数と圃場容水量に対する可動水の割合で特徴づける完全混合槽 列改変モデルで表されることを明らかにした。本モデルは、土壌表面に散布した非反応性のトレーサの浸透水中濃度と積算浸透水量を情報として必要とする。
公共用水域及び地下水の硝酸性窒素が新たに環境基準に追加され、畑地においても硝酸性窒素の溶脱量を低減することが求められている。亀裂等の発達した土壌 ではプレファレンシャルフロー(バイパス流等の不均一な土壌浸透水流の総称)が生じやすいために、硝酸性窒素の溶脱が加速されることが指摘されてきた。し かし、適切なモデルがないために発生したプレファレンシャルフローを数量的に表すことは難しい。そこで、広範な流動状況を表現できる完全混合槽列モデル を、非定常で不動水領域の存在する土壌システムに適用・改変し、プレファレンシャルフローのモデル化を試みた。
[1]
ここでΓはガンマ関数。 nの変化により土壌浸透水の様々な流動状況の表現が可能である(図2)。 n=1は完全混合を、n=∞はピストンフローを示す。またfmは、 fm=1のグラフを横軸方向にfm倍、縦軸方向に1/ fm倍拡大させる効果を持つ。[2]
この関係(図3)から、測定で得られる最大値に適合するnとfm を決定することができる。本モデルの活用により、異なる実験で生じたプレファレンシャルフローを比較することができる。今後は土壌特性や降雨条件がパラメータに及ぼす影響を検討す る必要がある。また、本モデルと化学反応モデルを組み合わせることにより、プレファレンシャルフローの優位な土壌での環境影響物質の動態予測が可能にな る。
図1:完全混合槽列改変モデルの概念図
図2:完全混合槽列改変モデルにおけるパラメータnの感度解析注)図中のシンボルは極大値
図3:極大値を利用したパラメータの決定
図4:モノリスライシメータから流出したBr-濃度を用いた解析例注)図中のシンボルは実測値、線は計算値土壌:Fuluventic Eutrochrept;φ298mm;長さ500mm 降水量:540mm;試験期間:7月22日~1月25日