微少熱量計による家畜ふん堆肥の腐熟度評価

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要約

土壌微生物によって短時間に分解される家畜ふん堆肥中の易分解性炭素化合 物量の測定が,微少熱量計で可能であり、その量は堆肥の腐熟度(生物的検定:コマツナ発芽試験法)と密接な関係がある。

  • 担当:農業研究センター・土壌肥料部・土壌診断研究室
  • 連絡先:0298-38-8901
  • 部会名:生産環境
  • 専門:土壌
  • 対象:
  • 分類:研究

背景・ねらい

家畜ふん堆肥の円滑な流通,利用には腐熟度,無機態窒素供給能などの品質情報は重要である.家畜ふんの腐熟の主な目的は,施用した際に急激な分解を引き起 こし,作物の窒素飢餓,生育障害などの原因となる易分解性有機物の十分な分解である.しかし,家畜ふん堆肥中の易分解性有機物の実態は明らかでなく,その 具体的数値情報も少ない.そのために腐熟度評価技術も十分なものとなっていない.そこで,高感度測定センサーとローノイズアンプをもつ微少熱量計を利用し た,堆肥中の易分解性炭素化合物量の測定,腐熟度評価の可能性を明らかにする.

成果の内容・特徴

  • 土壌微生物の増殖に好適な条件(土壌水分,pH)に調整した土壌,その増殖に必要な無機態窒素および炭素源としての家畜ふん堆肥を培養瓶中で混和すると,その炭素源の性質を反映した発熱曲線が微少熱量計で得られる (図1). 堆肥添加による発熱は,96時間内にほとんど終了する.この間に分解された炭素化合物を易分解性と見なすと,それらの発熱曲線とグルコース添加による標準曲線の積分値の比較から堆肥中の易分解性炭素化合物量(96時間資化量, 図2) は求められる.
  • 家畜ふん堆肥中の易分解性炭素化合物量と60°Cの熱水で家畜ふん堆肥から抽出した液(藤原の方法)に播種したコマツナの4日目の発芽率および根長には,負の相関 (図3, 図4) が認められる.その相関性は,いくつかの要素中それぞれ最も高く (表1) ,家畜ふん堆肥の腐熟度評価手法として微少熱量を用いた方法は有望である.

成果の活用面・留意点

  • 木質を多く含む家畜ふん堆肥についての検討は十分でない.
  • 本法は,土壌微生物の増殖に伴って発生する微少熱量(熱量計において明らかなピークを持つ)の測定を基本原理としているので,炭素源に対して一定量以上の無機態窒素が必要である.添加窒素量不足の場合,発熱曲線は歪むので,その不足は判る.
  • 無機態窒素を添加して微生物増殖の条件を整え,炭素化合物の分解を促進させる方法を利用した,二酸化炭素発生量測定等による迅速かつ簡易な堆肥中の易分解性炭素化合物量の測定法の開発が可能と考えられる.

具体的データ

図1:発熱反応測定例
図1:発熱反応測定例

 

図2:畜種ごとの易分解性炭素化合物量
図2:畜種ごとの易分解性炭素化合物量

 

図3:易分解性炭素化合物量とコマツナの発芽率
図3:易分解性炭素化合物量とコマツナの発芽率

 

図4:易分解性炭素化合物量と根長
図4:易分解性炭素化合物量と根長

 

表1:発芽率及び根長といくつかの要素との相関係数
表1:発芽率及び根長といくつかの要素との相関係数

 

その他

  • 研究課題名:有機資材の無機化モデルの高度化
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成11年度(平成10~12年)